新潟県南魚沼市を拠点とするニコ精密機器が、世界の海を舞台に大きな勝負へ出ました。同社は船舶やディーゼル発電機の心臓部を支えるエンジン部品の国内有力メーカーですが、2019年12月26日までに主力拠点である「第2工場」の改修を完了させたことが明らかになりました。
今回の改修は、海運業界を襲う「環境規制」という大きな波をチャンスに変えるための戦略的な投資です。SNS上でも「地方の精密技術が世界の環境を守るのか」「南魚沼から世界へ、技術の底力が頼もしい」といった、同社の高い技術力と志を支持する声が上がっています。
次世代の切り札「コモンレールシステム」とは
今回の設備投資で最大の目玉となるのが「コモンレール」と呼ばれる次世代燃料噴射システムです。これは燃料を高圧で蓄え、噴射のタイミングや量を電子制御で緻密にコントロールする仕組みを指します。いわば、エンジンの「頭脳」を司る極めて精緻な装置なのです。
従来の方式に比べて燃焼効率が劇的に向上するため、燃費が良くなるだけでなく、大気汚染の原因となる粒子状物質(PM)の排出を大幅に抑えることができます。第2工場の改修費用の約6〜7割がこのシステム向けに投じられており、まさに会社の命運を賭けたプロジェクトと言えるでしょう。
2019年夏から始まった工事によって最新の旋盤や加工機が導入され、2020年にはいよいよフル稼働を迎える予定です。こうした最新鋭の生産ラインから生み出される環境対応製品は、今後数年にわたり同社の成長を牽引する強力なエンジンとなるに違いありません。
2020年1月の「硫黄酸化物規制」という追い風
背景にあるのは、国際海事機関(IMO)が掲げた厳しいルールです。2020年1月1日から、船舶燃料に含まれる硫黄分の上限が3.5%から0.5%以下へと一気に引き下げられます。この規制に対応できない船舶は海を渡ることができなくなるため、高性能な部品への需要が爆発的に高まっています。
ニコ精密機器はIHI原動機の子会社として、売上高の約8割を海外輸出が占めるグローバル企業です。2019年3月期には売上高37億円を記録していますが、今回の数億円規模の投資によって、韓国や中国、欧州といった主要市場でのシェアをさらに盤石なものにする狙いが見て取れます。
私は、今回の動きを地方企業の理想的な「攻めの経営」だと高く評価しています。規制をただのコスト増と捉えるのではなく、自社の高い技術力を証明する絶好の機会へと昇華させた同社の決断は、多くの日本メーカーにとって素晴らしい道標となるのではないでしょうか。
2016年の「第3工場」新設に続き、2019年度も増産体制を強化し続ける同社の勢いは止まりません。今後5年間にわたる継続的な投資計画も示唆されており、南魚沼から発信される「クリーン・テクノロジー」が、世界の海をより青く、美しく変えていく日が今から楽しみでなりません。
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