新しい時代の幕開けを飾る、令和最初の「開門神事福男選び」が2020年1月10日に兵庫県の西宮神社で開催されます。毎年ニュースで行き交う、鬼気迫る表情で激走する参加者や、ダイナミックな転倒劇に胸を躍らせる方も多いのではないでしょうか。全国に数あるえびす神社の総本社で行われるこの神事は、わずか約200メートルの短い距離に信じられないほどのドラマが凝縮されているのです。
SNS上でも「今年こそは福男を目指したい!」「あのカーブを曲がり切る猛者たちが凄すぎる」と、開催前から大きな盛り上がりを見せています。しかし、この栄えある「福男」の称号を手にするためには、単に足が速いだけでは決して通用しない過酷な現実が待ち受けています。なんと、スタートラインに立つ前の段階から、参加者たちには想像を超える狭き門が課されているのです。
福男の可能性を掴むためには、まず2020年1月9日の午後10時から始まる受付に並び、先着1500名に配られる運命のくじを引き当てなければなりません。最前列の「Aブロック」に配置される108名に選ばれる確率は、わずか7.2%という驚異的な低さです。神に選ばれるための戦いは、走る以前の「強運の証明」からすでに始まっているといえるでしょう。
行く手を阻む難所の数々!ミスター福男が明かす攻略の極意
神事の運営組織代表であり、過去に二番福を2度も獲得したレジェンドの平尾亮さんによると、コースには数々の恐ろしい難所が存在します。赤門が開いた直後に待ち受けるのは、角度約135度の急カーブである通称「天秤カーブ」です。ここで多くの参加者が最初の餌食となり、激しく転倒していきますが、インコースを果敢に攻めることが勝利への鉄則となります。
その先に続く「福男道」は滑りやすい石畳の直線で、一瞬の油断が命取りになるエリアです。さらに進むと、進路を遮るように斜めに生えた「審判の楠」と呼ばれる巨木が行く手を阻みます。この木の左側をすり抜けなければ、次のカーブを曲がり切ることができなくなるため、事前のコース頭脳戦が勝敗を大きく左右するのです。
最後の難関は、本殿へと滑り込む100度の急コーナー「魔物の角」と、木製のスロープ「えびす坂」です。待ち構える神主に一番に抱きついた者が「一番福」の栄誉を授かります。神社側で参拝者を案内する禰宜(ねぎ:神職の役職の一つで、宮司や権宮司を補佐する重要な立場のこと)の千鳥さんも、この緊迫したコースを熟知することの重要性を語っています。
歴史から学ぶ神事の真髄と筆者が放つ独自の視点
この福男選びは1905年に阪神西宮駅が開業したことをきっかけに、遠方からの参拝客が急増したことで自然発生的に生まれた歴史を持っています。時代とともに参加者が増え、2005年には公平性を保つために現在のくじ引き制度が導入されました。ただ足が速い者を決めるエンターテインメントではなく、100年以上の歴史を紡いできた厳かな伝統行事なのです。
ここで編集部としての私見を述べさせていただきます。現代の福男選びはメディアで派手に取り上げられがちですが、本質はあくまで「神事」であり、神様への深い信仰と感謝を捧げる場です。スピードや勝敗だけに目を奪われるのではなく、参加者全員が怪我なく一年の福を願うという、日本古来の美しい精神性にこそ私たちは拍手を送るべきではないでしょうか。
実は、この神事は女性の参加はもちろん、ベビーカーや車椅子での参加も温かく受け入れています。当日配られる5000枚の「参拝之証」には、残り物には福があるという温かいメッセージが込められているようです。勝ち負けの興奮を味わうのも素敵ですが、今年はゆったりとした心地よい気持ちで、西宮の神聖な空気に触れてみるのも素晴らしい選択肢でしょう。
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