トランプ氏が揺らす2020年世界貿易のゆくえ!再選をかけた「関税の男」の光と影

2020年01月08日、世界の通商環境は大きな転換期を迎えています。その中心で嵐を巻き起こしているのが、アメリカのドナルド・トランプ大統領です。彼は安全保障を大義名分に掲げた鉄鋼関税の引き上げや、北米自由貿易協定の抜本的な見直しを次々と断行しました。さらに環太平洋経済連携協定、いわゆるTPPからの離脱を決めたことで、アメリカの農家は国際市場で不利な競争を強いられる結果となったのです。

こうした状況を挽回すべく、トランプ大統領は日本に対して新たな貿易交渉を要求しました。また、ヨーロッパ連合との関係悪化を恐れず、イギリスのEU離脱を支持するなど、その行動は予測不能です。なかでも世界経済を震撼させているのが米中貿易戦争でしょう。SNS上では「サプライチェーンが崩壊する」「製品の価格が上がるのではないか」といった、市民の切実な不安や悲鳴が数多く飛び交っています。

しかし、この激しい貿易摩擦は予期せぬ副産物も生み出しました。中国からの輸出が難しくなったことを受け、企業が生産拠点をベトナムなどへ移転させる動きが加速したのです。結果としてベトナムなどからの輸出が増加し、一部の国々にとっては思わぬ経済的恩恵となっています。世界的な大国同士の小競り合いが、グローバルなビジネスの地図を塗り替えつつある事実は非常に興味深い現象と言えるでしょう。

2020年11月に控える大統領選挙での再選に向け、トランプ大統領はなりふり構っていられません。勝敗のカギを握る中西部の激戦州には、鉄鋼業や自動車産業、そして大規模な農業に従事する人々が集中しているからです。これら重要産業の票を獲得するため、彼は日本から譲歩を引き出し、中国にはアメリカ産農産物を大量に買い付ける約束を取り付けました。有権者へのアピールとしては十分な成果に見えます。

ただ、農業が自身の弱点であることは他国にも見抜かれていました。中国は大豆、メキシコは乳製品、EUはバーボンといったトランプ大統領の支持基盤を狙い撃ちにした報復関税を課してきたのです。特定の国が自国を守るために、相手国の輸入品に対して高い税金をかける対抗措置を報復関税と呼びます。この激しい応酬を見る限り、一国主義的な関税政策がいかにリスクを伴うものであるかが浮き彫りになりました。

自らを「関税の男」と称するトランプ大統領ですが、実は一般消費者を敵に回せないという致命的な弱点も抱えています。そのため、スマートフォンなどの生活に密着した消費財が含まれる対中制裁の第4弾は見送らざるを得ませんでした。選挙を意識するあまり、関税という強力な武器を自由に振り回せなくなっている状況は皮肉なものです。強気な姿勢の裏にある焦りが透けて見える気がいたします。

議会による弾劾手続きが進むなかでも、共和党員の強固な支持を背景にトランプ大統領は余裕の表情を崩していません。ところが、大統領の強力な支持母体であるキリスト教福音派の有力雑誌が、彼を痛烈に批判する論説を発表したことで風向きが変わり始めました。ネット上でも「ついに足元が揺らぎ始めた」「再選戦略に大打撃だ」と、今後の政権運営をめぐる議論が白熱しています。

もし共和党内の結束が乱れれば、トランプ大統領は実績作りのために、これまで以上に強硬な貿易交渉を仕掛けてくる恐れがあります。しかし、交渉相手の国々もすでに彼の行動パターンや弱点を徹底的に学習しているため、一筋縄ではいきません。米中間に残された課題は中国の国家体制そのものに踏み込む内容が多く、2020年の通商交渉はさらなる泥沼化が予想されるでしょう。

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