2020年を迎え、人間の肉体的、知覚的な限界を打ち破る「超人技術」が本格的に開花しようとしています。重い荷物を軽々と運ぶアシストスーツや、念じるだけで自在に動くロボットアームの登場に、SNSでも「いよいよサイボーグ時代が来た」と興奮の声が溢れています。しかし、最新の研究が目指すのはそれだけではありません。なんと私たちの肉体や感覚をコントロールしている「脳」そのものを拡張し、分化させるという驚異のテクノロジーが進化しているのです。
まるでアニメや映画で描かれたSFの世界が、いよいよ現実のものになろうとしています。自分そっくりの分身と深い対話を楽しんだり、この世に実在しない理想のアイドルに熱狂したりする未来が、すぐそこまで迫っているのです。技術の進歩は私たちのライフスタイルを根底から覆す可能性を秘めており、新しい時代の幕開けに胸が躍ります。これからは単に機械を使うだけでなく、自分自身の存在をデジタル空間へ広げていく時代になるでしょう。
自分の意思を受け継ぐデジタルツインの誕生
人工知能の開発に取り組むスタートアップ企業のオルツは、個人の意思をデジタル化する「P.A.I.(パーソナル・アーティフィシャル・インテリジェンス)」という画期的な仕組みを手掛けています。これはスマートフォンで撮影した顔写真に加え、SNSの投稿文やメール、会議の発言といったあらゆる日常のデータを学習させて作る「もう一人の自分」です。行動の予定や人間関係、性格や趣味嗜好にいたるまで、人間の内面を驚くほど忠実に再現します。
現在はまだ熟練者の技術を写し取って後進の育成に活かす段階ですが、最終的には本人と見分けがつかない精度を目指しています。「あれを買いたい」と心で念じるだけでネットショッピングが完了し、「あの人に連絡しなきゃ」と思えば自動でメールが送られる、そんなストレスフリーな世界が構想されています。ネット上では「面倒な雑務をすべて分身に任せたい」という期待がある一方で、「データ管理の安全性が心配」というプライバシーを懸念する声も上がっています。
ブロックチェーンが育てる!実在しない仮想アイドル
さらに、現実には存在しないのに、確かにそこにいると感じられる仮想アイドルの育成プロジェクトも始動しています。ジーンアイドルは2019年11月に、AIとブロックチェーンを融合させた「A.I.dols Codebase」という革新的なサービスを開始しました。この技術は、実在する女性の顔画像を学習したAIが、人間らしい個性を持つ新しいアイドルの容姿や名前を自動で生成するものです。左右非対称の絶妙なバランスなど、機械製とは思えない品質を誇ります。
今後は、ダンスのレッスンや衣装の着せ替え、メイクによる容姿のブラッシュアップ機能が追加される予定です。将来的にはSNSやVチューバーとしてデビューし、本物のアイドルのように経済活動を行う青写真も描かれています。プロデュースの履歴はブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳に記録され、アイドルの「遺伝子データ」として蓄積されます。映画のように、自分だけの仮想アイドルに恋を育むファンが誕生する日も遠くありません。
リアルとバーチャルの境界線が消える日
早稲田大学の森島繁生教授の研究室では、深層学習(ディープラーニング)を用いて動画から顔の向きや表情を解析し、写真と数秒で合成する技術を開発しています。これは「ディープフェイク」と呼ばれる高度な画像合成技術の一種で、毛穴の質感までリアルに再現可能です。森島教授は「すでに人間には見分けられないレベルで、1〜2年後には商業利用ができる品質に達する」と語っており、役者の3Dモデルを活用した低コストな広告制作などへの応用が期待されています。
このように脳や存在を分化させる技術は利便性が高い反面、倫理的な課題や偽情報の拡散というリスクと隣り合わせです。私たちは、テクノロジーがもたらす恩恵を無邪気に喜ぶだけでなく、何が本物で何が偽物かを見極める強い目を持たなければなりません。現実と仮想の垣根が消え去る混沌とした未来を、豊かな社会にするか混乱の時代にするかは、今を生きる私たちの倫理観にかかっています。高度な技術の歩みとともに、適切なルール作りが急務と言えるでしょう。
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