北越工業・寺尾社長が語る2020年の展望!「防災・減災」と「スマート農業」を武器に国内市場へ攻勢をかける理由

2020年を迎え、日本のものづくり産業や建設機械業界の進路に大きな注目が集まっています。東京五輪関連のインフラ整備が一段落した今、これからの需要をどう見込むべきなのでしょうか。エアコンプレッサーや高所作業車の大手メーカーである北越工業の寺尾正義社長に、これからの戦略を伺いました。ネット上でも「五輪後の景気動向が気になる」「国産の強みに期待したい」といった声が上がっており、同社の次の一手に高い関心が寄せられているようです。

寺尾社長は、2018年から2019年にかけてピークを迎えた国立競技場などの五輪特需が落ち着くと言及されました。しかし、首都圏を中心に計画されている大規模な再開発や、建物の耐震化工事は今後も継続する見通しです。そのため、五輪閉幕を理由に売上が急激に減少する心配はないと、力強い見解を示してくださいました。これには、目先のイベントに左右されない都市インフラの底堅い需要が背景にあるといえます。

一方で、海外市場に目を向けると、世界情勢の不透明感が影を落としているのが現状です。米中貿易摩擦の直接的な打撃はないものの、中国経済の減速は東南アジア諸国へ確実に波及しつつあります。現地の設備投資が冷え込めば、建設機械の販売にも当然ブレーキがかかるでしょう。さらに、香港で長期化するデモ活動も、アジア全体の景気を下押しする懸念材料として無視できない状況になっています。

実際に2018年から2019年にかけたアジア向け輸出は、前年比で10%から20%も減少してしまいました。現在も好調を維持しているのはベトナムとフィリピンなどの一部地域に限られており、主要市場であったマレーシアやインドネシア、シンガポールでの苦戦が続いています。このような海外特有の政治的リスクを背景に、今後は多くの日系企業がインフラの安定した日本国内へ生産拠点を戻す動き、いわゆる「国内回帰」が進むのではないでしょうか。

北越工業はこの流れを好機と捉え、国内の工場建設に伴う産業用機械のシェア拡大を狙います。これを支えるのが、同社の本拠地である新潟県燕市に完成したばかりの新工場です。これにより生産能力は従来比で3割も向上することとなりました。過去には納期が通常3カ月のところ、倍の半年以上かかってしまい顧客に迷惑をかけた反省があったといいます。2020年を将来の需要ピークに向けた体制づくりの期間と位置づけ、効率的な人員配置を急いでいます。

これからの成長分野として特に期待されるのが、昨今の自然災害の多発を受けた「防災・減災」に関連する領域です。堤防や山の斜面を補強する工事には、同社の強みであるコンプレッサー(空気を圧縮して送り出す機械)が不可欠であり、需要の大幅な伸びが見込まれます。また、停電時のバックアップ電源として機能する発電機も、オフィスや工場、さらには養鶏施設といった幅広い現場で、その重要性と存在感が一層高まっている状況です。

さらに、同社は新たな挑戦として「施設園芸」と呼ばれる、ガラス室やビニールハウスを用いた最先端の農業分野へも参入しました。開発された農業用高所作業車は、通路のレール上を移動しながら2メートルから3メートルの高さにある作物を収穫できる優れものです。トマトやパプリカなどを大規模に栽培する先進的な農家をターゲットにしており、効率的な生産を支える切り札として期待を集めています。

この施設園芸市場では、先行する欧州製の機材を導入している生産者が多いのが実態です。しかし、北越工業の製品はすべての部品が日本製という圧倒的なアドバンテージを持っています。万が一のトラブル時にも迅速な修理や部品交換といった即応が可能であり、日本の農家の要望に合わせた細かな仕様変更にも柔軟に対応できます。この国産ならではの「安心感」と「利便性」こそが、シェアを覆す最大の武器になるはずです。

こうしたオーダーメイド型のモノづくりを支えるのは、他ならぬ優秀な技術者たちにほかなりません。寺尾社長は昨今の働き方改革について、「長時間労働の是正などは当たり前の前提である」と一蹴します。経営者として真に果たすべき責任は、求職者がどうしても働きたくなるような素晴らしい業績を残し続けることだと熱く語ってくださいました。小手先の条件ではなく、企業の成長姿勢そのもので人を惹きつけるという信念を感じます。

世界経済に不透明感が漂う今だからこそ、国内の確実なニーズを掘り起こし、攻めの投資を行う姿勢は非常に理にかなっていると考えます。特に防災対策や農業の効率化は、現在の日本が直面している社会課題そのものです。企業の社会的価値を高めつつ、独自の技術力で市場を切り拓いていく北越工業の2020年の躍進から、目が離せそうにありません。

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