私たちが日常的に利用しているスマートフォンやパソコンには、ネット銀行の口座情報から大切な写真まで、膨大なデータが詰め込まれています。しかし、もし自分に万が一のことが起きたとき、その中に眠る大切な資産や思い出が誰にも引き出せなくなるリスクをご存じでしょうか。このように遺族がアクセスできなくなってしまった端末やアカウントは「デジタル遺品」と呼ばれ、近年深刻な社会問題となっています。ネット上でも「親のスマホのパスワードが分からず口座解約に苦労した」「自分に何かあったらと思うとゾッとする」といった、不安の声が数多く上がっているのです。
こうした現代ならではの課題を解決するために、デジタルキーパー株式会社(東京都千代田区)は、アカウント情報の管理とスムーズな相続をサポートする画期的なサービスを展開しています。多くの人は、複数のパスワードを文書ファイルにまとめてパソコンに保存したり、端末自体にロックをかけたりしてセキリュティを強化しているでしょう。しかし、冨田志信社長が「遺族が相続のときに保管場所が分からず、困ることが多い」と指摘するように、徹底した秘密主義が仇となり、残された家族を迷宮に迷い込ませてしまうケースが後を絶たないのが現状です。
そこで同社が提案するのが、データ本体とそれを開くための「カギ」を別々に管理するという、セキュリティと利便性を両立させた目からウロコの手法です。具体的には、端末のロック解除番号や、アカウントをまとめたファイルを開くためのパスワードだけを同社が預かり、強固に暗号化します。暗号化とは、第三者には解読できない複雑な符号にデータを変換する技術であり、これにより情報漏洩を防ぐことが可能です。このカギを閲覧できるのは、利用している本人か、あらかじめ指定された配偶者などの継承者だけに限定されています。
特筆すべきは、アカウントが記載されたファイルそのものはデジタルキーパー側では預からないという点です。冨田社長は「大切なものとカギを別々に保管することでリスクを抑えられる」と語っており、ファイル自体はパソコン内などへ分散して保管することを推奨しています。大切な中身とそれを開けるカギを別の場所に置いておけば、万が一どちらかが破られても安全というわけですね。まだ情報をファイルにまとめていないという初心者の方に対しても、パスワードをかけて安全に保管する具体的な手順を丁寧にレクチャーしてくれるため安心でしょう。
見事なのは、本人が亡くなったことを検知する仕組みです。会員には、健在であることを確認するためのメールが週に3回届くシステムとなっています。もしこの連絡に対して9回連続で応答がなかった場合、同社は異常事態と判断し、あらかじめ指定されていた継承者へ預かっていた解除番号やパスワードの情報を開示する仕組みです。これなら生前に家族へパスワードを伝えておく気恥ずかしさや、生前漏洩のリスクもありません。月額429円という手頃な価格で、遺される家族への最大の思いやりと安心を買うことができるのは非常に魅力的です。
情報化社会において、私たちは自分の死後のデジタルデータにまで責任を持つ時代を迎えているのだと感じます。これまでは「形のない遺産」として見過ごされがちだったオンライン口座やSNSのアカウントですが、今や不動産や現金と同じくらい重要な相続対象です。元気なうちからこうした仕組みを導入することは、決して縁起の悪いことではなく、大切な家族の未来を守るためのスマートなマナーと言えるのではないでしょうか。誰もが直面するこの問題に対し、カギの分散管理という明確な最適解を提示した同社の取り組みには、今後も大きなに期待が集まりそうです。
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