日本のビジネスシーンに、新たな変革の風が吹き抜けようとしています。カラオケチェーン「まねきねこ」を展開するコシダカホールディングスは、2020年03月を目途に、フィットネス事業を運営する子会社カーブスホールディングスを「スピンオフ」によって分離・独立させることを発表しました。
スピンオフとは、特定の事業部門や子会社を、親会社との資本関係を完全に解消した独立企業として切り離す手法です。これまでの日本では、子会社を上場させても親会社が株を持ち続ける「親子上場」が一般的でしたが、今回は親会社が持つ子会社株をそのまま自社の株主に分配するという、非常に画期的な試みとなります。
SNS上では「ついに日本でも本格的なスピンオフが始まるのか」「親子上場の不透明さが解消される一歩になる」と、投資家やビジネスパーソンを中心に大きな期待が寄せられています。特に、独立性の高い経営が可能になる点や、意思決定のスピードアップがもたらす成長性に注目が集まっているようです。
税制改正が後押しした「欠けていたピース」の充足
実は、この手法には長年「税制」という高い壁が立ちはだかっていました。かつては事業を切り離す際、実際には現金が入ってこないにもかかわらず、帳簿上の価格と時価との差額に対して多額の課税が発生していたのです。過去には、この税負担が足かせとなり、再編を断念せざるを得ないケースも少なくありませんでした。
しかし、2017年04月の税制改正により、一定の条件を満たせば課税を先送りにできる「課税繰り延べ」が認められるようになりました。まさに制度上の欠陥が埋まったことで、今回のコシダカホールディングスによる「国内第1号案件」が実現へと動き出したのです。
欧米では、米化学大手のダウ・デュポンが部門ごとに3社へ分割するなど、スピンオフは経営効率を高めるための一般的な手段として定着しています。日本でも今回の事例が呼び水となり、複雑に絡み合った事業ポートフォリオを整理する企業が増えるのではないでしょうか。
経営者の勇気が試される「株主視点」の重要性
今回の決断において、腰高博社長が「ガバナンスへの厳しい目」を意識した点は見逃せません。親会社の影響力が残る親子上場は、時に子会社の一般株主の利益を損なう恐れがあると批判されます。スピンオフは、そうした懸念を払拭し、子会社が自立して成長するための「緊張感」を生み出す特効薬と言えます。
一方で、スピンオフは親会社の経営者にとって「身を削る」選択でもあります。優良な子会社を手放せば、連結決算での売上高や利益は当然減少します。コシダカホールディングスの場合も、2020年08月期の営業利益は前期比で15%減少する見込みとなっており、数字上の規模縮小を受け入れる勇気が必要でした。
私は、今回の事例こそが日本企業に蔓延する「コングロマリット・ディスカウント」を解消する鍵になると確信しています。多角化によって企業価値が低く評価されてしまう現状を打破するには、経営者が自らの規模への執着を捨て、株主にとって何が最善かを問い直す真の「株主本位」の姿勢が求められているのです。
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