広大な大地を走るJR北海道が、歴史的な転換期を迎えています。同社は2031年度までの連結黒字化を目標に掲げていますが、2018年度の最終赤字は179億円にのぼり、その道のりは決して平坦ではありません。島田修社長は「地方の鉄路はバスよりも効率が悪い」と断言し、従来の鉄道維持に固執しない姿勢を明確にしています。この大胆な発言に対し、SNS上では「地方の現実を捉えた冷静な判断だ」と支持する声がある一方で、「地域の足である鉄道が消えるのは寂しい」といった懸念の声も上がっており、大きな議論を呼んでいるのです。
2019年11月には、日高線の沿線7町がバスへの転換を受け入れたことで、維持が困難な路線を巡る問題が大きく前進しました。ここで島田社長が指摘するのは、地方交通の最適化とコスト負担のあり方です。地方の路線では、1両編成の列車に対して運転士が1人という体制が一般的であり、これはバスと変わりません。しかし鉄道の場合、駅員や線路をメンテナンスする保線係員など、目に見えない多くの維持コストが必要になります。つまり、利用者が少ない地域において、鉄道の運用は極めて非効率的な構造になっているのです。
深刻な人口減少に立ち向かう、スピード感のある公共交通の再編
北海道が直面している人口減少の波は、全国平均よりもはるかに深刻なスピードで進んでいます。今から20年後には、北海道の人口が420万人まで減少すると予測されているのです。さらに看過できないのは、減少しようとしている100万人のうち、約80万人が働く世代である「生産年齢人口」にあたるという点でしょう。これに伴う深刻な人手不足は、単に一企業の問題ではなく、北海道全体の危機として捉える必要があります。
生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の経済活動を支える中核となる世代を指す専門用語です。この層が激減する中で、利用者が極めて少ない路線を無理に維持しようとすれば、結果として公共交通ネットワーク全体が共倒れになりかねません。そもそも鉄道の駅だけでは、病院や高校、温泉地といった最終目的地に直接たどり着けないケースも多いため、地域の実情に合わせた柔軟なモビリティの構築が急務となっています。
地元からは「路線の廃止や転換を簡単に決められない」という慎重な意見もありますが、人口減少に対しては一刻も早く手を打たなければなりません。JR北海道の経営自立には2031年度までかかる見通しで、それまでは赤字が続くため、国による継続的な支援が不可欠です。この支援を確実にするため、2020年度中には関連法の改正が必要とされており、企業としての自助努力を国や社会に示していくことが強く求められています。
札幌大開発と観光活性化、そして新幹線の高速化へかける期待
2020年における具体的な経営努力として、同社はいくつかの大きな柱を打ち出しています。まずは、観光やビジネスの命綱である「快速エアポート」の増便です。さらに、アイヌ文化の発信拠点である民族共生象徴空間「ウポポイ」の開業に合わせ、特急列車を多く停車させるために最寄りとなる白老駅の補修工事を進めています。こうした観光需要の取り込みは、地域の活性化において極めて有効な戦略と言えるでしょう。
また、最大の注目は札幌駅周辺の大規模な再開発計画です。2019年11月には準備組合が立ち上がり、2020年の秋までに基本計画が発表される予定となっています。ここには札幌で最も高い50階建て級の複合ビルの建設が計画されており、都市のランドマークとしての期待が高まります。資金計画についてはこれからの策定となりますが、不動産投資信託である「REIT(リート)」や、特定の事業のために設立される「SPC(特別目的会社)」の活用が視野に入っています。
REITとは、多くの投資家から集めた資金で不動産を運用し、その利益を分配する仕組みのことです。またSPCとは、特定のプロジェクトの資産を会社の本体から切り離して管理するための組織を指します。これらを活用すれば、本業の経営リスクを抑えながら巨額の建設資金を調達することが可能になり、非常に合理的で賢明な経営判断だと私は評価しています。
さらに、東京と札幌を4時間半で結ぶという目標に向けて、北海道新幹線のスピード向上も重要な課題です。現在は貨物列車との共用区間である青函トンネル内において、新幹線の速度が時速160キロメートルに制限されていますが、2019年秋の試験に続き、2020年中には営業列車を使った実証実験が行われる予定です。JR貨物や国、物流関係者と連携し、新幹線で荷物と乗客を同時に運ぶ「貨客混載」の実現など、次世代のインフラ構築へ向けた挑戦が続いています。
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