精密機器大手のHOYAが、医療の歴史を大きく塗り替える画期的な一歩を踏み出しました。同社は2020年01月16日、大腸の内視鏡検査を強力にサポートする人工知能(AI)プログラムが、欧州連合(EU)の安全基準を満たす「CEマーク」の認証を得たと発表したのです。このCEマークとは、ヨーロッパ市場で製品を流通させるために不可欠な、いわば「安全性と品質の太鼓判」のようなもの。今回の快挙により、日本の優れたテクノロジーが欧州の医療現場へ本格的に羽ばたくことになります。
今回認証された新システムは「ディスカバリー」と名付けられ、同社の医療機器ブランド「ペンタックスメディカル」の内視鏡と連動して機能します。検査中に大腸ポリープという、将来的にがん化する恐れがある粘膜の塊を感知すると、画面上で瞬時に青い枠を表示して医師に通知。これにより、肉眼だけでは見落とされがちだった微小な病変を確実にキャッチできるようになるでしょう。SNS上でも「これで見落としが減るなら安心」「医療AIの進化スピードが凄い」と、大きな期待が寄せられています。
この驚異的な識別能力の背景には、実に12万枚以上もの膨大な画像データを読み込ませてAIを鍛え上げた、開発陣の並々ならぬ努力があります。さらに特筆すべきは、検査の映像と完全に連動して「リアルタイム」に怪しい場所を指摘できる点です。一瞬の油断も許されない医療の最前線において、タイムラグなしで並走してくれるAIは、医師にとってまさに究極の副操縦士と言えます。HOYAが診断支援の分野で認証を得たのは初であり、並々ならぬ覚悟が伺えるでしょう。
医療AI市場で火花を散らす国内大手メーカーの技術覇権争い
内視鏡の分野におけるAIの活用は、今や世界中のメーカーがこぞってしのぎを削る最先端の戦場となっています。例えば最大手のオリンパスは、早くも2019年に大腸の早期がんなどを判別する「エンドブレイン」というシステムを日本国内で発売しました。このシステムの驚くべき点は、なんと9割を超える正答率を誇るという点です。経験の浅い医師の正答率が7割前後にとどまるデータと比較すると、熟練の目を持ったAIがどれほど頼もしい存在であるかが分かります。
また、富士フイルムも負けてはおらず、病変を発見する独自のAIシステムを欧州市場に向けて申請している最中です。彼らの戦略は単なる発見にとどまらず、診断後のレポート作成から精密検査部門とのデータ共有までを、一つの共通システムでシームレスに連携させる点にあります。このように各社が独自の強みを活かして最先端技術を競い合うことで、医療の質が底上げされるのは間違いありません。私たち患者にとっても、実に心強い時代の到来と言えます。
編集部の視点として、このAI医療の普及は医師の負担軽減という観点からも極めて重要な意味を持ちます。慢性的な人手不足や過酷な勤務体制が課題となる医療界において、AIが病変の一次チェックを担うことで、医師はより高度な意思決定や患者へのケアに集中できるようになるはずです。技術の進歩が医療格差を埋め、世界中の誰もが均一で最高峰の医療を受けられる社会がすぐそこまで来ています。2020年春の欧州発売を皮切りに、この波は世界へ広がるでしょう。
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