世界的なECサイトの巨頭であるアメリカのアマゾン・ドット・コムが、巨大なインド市場に向けて驚きの新戦略を打ち出しました。最高経営責任者(CEO)を務めるジェフ・ベゾス氏が2020年1月15日にニューデリーの社内イベントで語った内容は、世界中を驚かせています。なんと2025年までに、10億ドル(日本円で約1100億円)という巨額の資金をインドの中小企業へ投資すると発表したのです。
この投資の大きな柱となるのが、インド国内に100カ所も新設される「デジタルセンター」という拠点です。デジタルセンターとは、インターネットを活用したビジネスに不慣れな中小企業や個人商店に対して、オンラインで商品を販売するためのノウハウを教えたり、物流や広告の仕組みをサポートしたりする最先端の支援施設を指します。ベゾス氏は、2025年までに100億ドルにのぼるインド製品を世界へ送り出すと息巻いています。
SNS上では「インドの小さな商店が世界へ羽ばたくチャンスだ」「1100億円の投資は規模が違いすぎる」といった期待の声が寄せられました。その一方で、「地元の店がアマゾンに飲み込まれてしまうのではないか」という不安のつぶやきも目立っています。実はこの莫大な投資の背景には、現地での激しい反発とインド政府による厳しい外資規制の強化という、一筋縄ではいかない大人の事情が隠されているのです。
急成長するインド市場と「経済テロリスト」と呼ばれるアマゾンの苦悩
2013年にインド市場へ参入したアマゾンは、これまでも約55億ドルを投じて配送インフラなどを整備してきました。ある業界団体の調査によると、インドにおけるネット通販の市場規模は2020年に1200億ドルへ達する見込みで、まさにバブル状態です。アメリカのウォルマート傘下である「フリップカート」とアマゾンの2強が、この爆発的な市場拡大をハイスピードで牽引しているのが現状と言えます。
しかし、この急速な変化は地元で昔から愛されてきた小さなお店を直撃しています。ベゾス氏が現地を訪れた2020年1月15日にも、約7000万人の小売業者が加盟する「全インド商業連盟」が猛烈な抗議デモを起こしました。同連盟の幹部は、アマゾンなどが圧倒的な資金力で不当に安い価格をつける「略奪的な価格設定」を行っていると指摘し、中小企業の生活を破壊する存在だと激しく非難しています。
こうした声を受けて、インド政府は2019年2月に外資規制を厳格化し、商品の囲い込みや有利な価格設定につながる独占契約を禁止しました。さらに日本の公正取引委員会にあたる「インド競争委員会」も、2020年1月13日に独占禁止法違反の疑いでアマゾンなどの調査を開始しています。今回の巨額投資には、こうした逆風をかわし、「私たちは敵ではなく味方ですよ」とアピールする狙いがあるのでしょう。
大企業の進出が地元の産業を脅かす構図は、世界中で繰り返されてきた歴史です。しかし、今回のデジタル化支援が本物であれば、インドの小さな商店が国境を越えて富を得る大チャンスに変わる可能性も秘めています。アマゾンが単なる市場の独占者となるのか、それともインドの経済発展の真のパートナーになれるのか、今後の動向から目が離せません。編集部としても、この巨大な変革の行く末を注視していきます。
コメント