半導体の受託生産で世界最大手に君臨する台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が、激動の時代の中でさらなる高みへ導かれようとしています。同社は2020年1月16日、台北市内で決算会見を開催し、2020年12月期の連結売上高が約2割も増加する見通しを発表しました。スマートフォン市場の減速による一時的な停滞期を完全に脱出し、次世代通信規格「5G」の本格的な普及の波を捉えて再び急浮上する形です。
SNS上でもこの驚異的なV字回復は大きな話題を呼んでいます。「異次元の成長スピードだ」「世界経済の命運はTSMCが握っている」といった驚きの声が続出しました。世界中の投資家が同社の動向に熱い視線を注いでいるのは間違いありません。今回の強気な業績予測の背景には、5Gの導入に伴うデータ処理量の爆発的な増加と、それに伴う高性能な最先端半導体への需要が急激に高まっている現実が存在します。
特筆すべきは、過去最高となる150億から160億米ドル、日本円にして実に1兆6000億円を超える巨額の設備投資に踏み切る点でしょう。この投資規模は、製造装置や原材料を供給する日本企業にとっても、莫大な恩恵をもたらす特大の追い風となる見込みです。私個人の見解としても、この圧倒的な資金力と技術投資のスピード感こそが、競合他社を寄せ付けないTSMCの真の強みであり、他国の追随を許さない独走状態を維持する原動力だと確信しています。
ファウンドリーの絶対王者が仕掛ける巨額投資と独走体制
ここで注目したいのが、同社が専門とする「ファウンドリー」というビジネスモデルです。これは自社で製品を設計せず、他社から委託された半導体の製造に特化する枠組みを指します。TSMCは米アップルのiPhoneに搭載されるCPU(中央演算処理装置)など、現代の電子機器の「頭脳」を一身に引き受けてきました。これにより、韓国のサムスン電子や米国のインテルと並ぶ世界半導体「ビッグ3」の一角へと成長を遂げたのです。
最先端分野での競争相手は、今や巨額の投資を掲げるサムスン電子のみに絞られつつあります。ライバルを突き放すようにTSMCの時価総額は32兆円規模に達し、史上最高値圏を推移していました。しかし、直近の株価は下落を見せています。その理由は、自由貿易の恩恵を最大限に受けてきた同社が、深刻な「米中板挟みリスク」に直面しているためです。ハイテク分野での覇権を争う両大国の政治的思惑が、同社の未来に影を落とし始めています。
米政府が中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)への禁輸規制を厳格化するとの報道が流れ、市場には緊張が走りました。ファーウェイ傘下のハイシリコンは優れた設計技術を持ちますが、製造をTSMCに全面依存しています。また、TSMCにとっても中国顧客の売上高比率は2割に達しており、規制強化が直撃すれば無視できない影響が出る恐れがあるでしょう。自由貿易の崩壊とも言える陣営の切り離しは、同社にとって最大の試練となります。
さらに米国からは、最新鋭ステルス戦闘機「F35」に用いられる軍用半導体を米国内で生産するよう圧力がかかっています。これに対し同社首脳陣は、コスト面や顧客への価格高騰を懸念し、慎重な構えを崩していません。しかし、もし仮に中国側への出荷が止められたとしても、5G需要による生産引合が強烈なため、別の顧客がすぐに枠を埋めるという見方もあります。米中の狭間で舵取りを迫られる同社の決断から、今後も一瞬たりとも目が離せません。
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