経営再建の渦中にあるジャパンディスプレイ(JDI)の救世主として、独立系投資ファンド「いちごアセットマネジメント」が急浮上しています。不適切決算の疑いが報じられる逆風のなか、2020年1月中の最終契約に向けて両社の交渉は本格化している模様です。驚くべきは、当初の想定を遥かに超える800億円から900億円規模の資本支援へと拡大し、議決権の過半数を握る可能性まで出てきた点でしょう。
この破格の支援方針に対してSNSなどインターネット上では、「技術流出を防いでほしい」「アップルが後ろ盾ならまだ舞い戻れるのでは」といった期待の声が寄せられています。その一方で、「変化の激しいハイテク分野を投資ファンドが本当に再生できるのか」という、先行きを不安視する冷ややかな意見も交錯しているのが現状です。世間の注目がこれほどまでに集まる背景には、いちごアセットの「強気の成算」が存在します。
本来、技術革新のスピードが早いハイテク産業は、金融のプロである投資ファンドが最も苦手とする領域と言えます。実際に、他の出資者候補が次々と離脱していくなかで、いちごアセットだけが交渉の席に残り続けました。同社の創業者であるスコット・キャロン氏がこれほどの巨額投資を決断できた決定的な理由は、米テック大手のアップルによる強力なバックアップを確信しているからに他なりません。
アップルの調達担当幹部は、2019年10月下旬に極秘で来日し、JDIへの支払い前倒しといった異例の支援を決定しました。さらに、ライバルである韓国のLGディスプレーがアップル向けの液晶事業を縮小するとの見方が強まっており、アップルにとってのJDIの重要性はむしろ高まっています。大口顧客との強固な信頼関係こそが、今回の買収劇における最大の勝算なのです。
私は、この再建劇には単なるビジネスを超えたキャロン氏の「執念」があると感じています。JDIはかつて経済産業省(旧通商産業省)の主導で液晶事業を統合して誕生しましたが、結果として市場の変化に追いつけず迷走しました。実はキャロン氏は1995年の著書で、国の時代遅れなハイテク政策を辛辣に批判しており、JDIの失敗を当時から予言していたとも言えるのです。
国が主導して失敗した日本のものづくり企業を、外資系出身のファンドが独自の戦略で再生へと導くストーリーは、非常にドラマチックではないでしょうか。同氏が経産省の代わりにJDIを復活させることができれば、自身の過去の主張が正しかったことを証明する最高の機会になります。一期一会の精神を持つ彼が、日本の液晶の灯を消さずにどう輝かせるのか、その手腕に注目です。
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