日本の自動車市場で、いま熱い視線を集めているブランドをご存知でしょうか。2019年の国内新車販売が消費増税などの影響で前年比1.5%減と落ち込む中、圧倒的な存在感を放っているのが、欧米の自動車大手であるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)です。なかでもアメリカを代表するブランド「ジープ」や、イタリアの「アバルト」が異例の2桁増を記録しました。
FCAが展開する4ブランドの2019年合計販売台数は、前年比9.9%増の2万4,666台に達しています。他社の輸入車、特に堅調だったドイツ車勢が苦戦を強いられる中で、この躍進はまさに驚異的と言えるでしょう。SNS上でも「最近街中でジープを本当によく見かけるようになった」「無骨なデザインが逆に新しくて格好いい」といった好意的な声があふれています。
この快進撃を牽引しているのが、若年層からの熱烈な支持です。日本の一般的な自動車保有者の平均年齢が53歳であるのに対し、ジープのオーナーは平均39歳という驚きの若さを誇っています。かつて「アメ車」といえば、排気量が大きく燃費が悪いというイメージが先行し、2016年にはフォード、2018年にはクライスラーが日本市場から撤退する厳しい時代もありました。
しかし、現在のジープはそんな固定観念を完全に見事に覆しています。特に人気を集めているのが、悪路を突き進む力強い走破性と高いデザイン性を兼ね備えた「ラングラー」や、都市部でも扱いやすいコンパクトな多目的スポーツ車(SUV)の「レネゲード」です。SUVとは、日常使いからアウトドアまで幅広く活躍するスポーツ用多目的車のことを指します。
11年ぶりの全面改良を遂げたラングラーは、2019年に4,873台を売り上げ、ブランド全体の4割近くを占める大ヒットとなりました。気になる燃費性能も1リットルあたり10キロメートル前後を確保しており、現代のユーザーが求める実用性を十分に満たしています。荒野を駆けるタフさと、洗練された街乗りのスタイルが見事に融合した結果と言えるでしょう。
こうした人気を背景に、ジープは輸入SUV市場において、ついにあのBMWを抜き去り2位へと浮上しました。筆者はこの躍進について、単なるブームではなく、画一化された国産車にはない「個性の表現」を求める現代の若者のライフスタイルに見事にマッチした結果だと確信しています。所有すること自体がステータスになる魅力が、彼らの心を捉えて離さないのです。
FCAは2020年、この勢いをさらに加速させるため、全国で約70拠点の販売店を新設・改装する大規模な投資に踏み切ります。さらに、日本市場のためだけに開発された専用モデルを含む、45台もの限定車を集中投入する計画です。これまで2割未満にとどまっていた女性客の比率を3割まで引き上げることで、さらなる成長を目指す戦略も掲げています。
FCAジャパンのポンタス・ヘグストロム社長が「過去最高を更新する準備は整っている」と語るように、その鼻息は非常に荒く、自信に満ちあふれています。ジープという強力なキャラクターを呼び水に、フィアットなど他のブランドも巻き込んだFCA全体の進撃は、これからの日本の自動車市場をより一層エキサイティングに面白く変えていくに違いありません。
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