インターネットの世界で今、個人情報の扱いに関する巨大な地殻変動が起きています。2020年01月24日、米グーグル社が外部企業によるユーザーのネット閲覧履歴の把握を制限する方針を打ち出し、業界に激震が走りました。これまで頼りにしてきた広告やマーケティングの精度が落ちるのではないかと、多くの企業が頭を抱えています。ネット上でも「プライバシーが守られるのは嬉しいけれど、自分に関係のない広告ばかりになるのは困る」といった困惑の声が広がっている状況です。
こうした課題を解決する救世主として脚光を浴びているのが「ゼロパーティ・データ」という新しい概念になります。これはアメリカの調査会社であるフォレスターリサーチ社が提唱したデータの分類方法です。従来のマーケティングでは、他社から購入した閲覧データなどが主流でした。しかし、これからは消費者自身が納得して提供する情報の価値が見直されています。SNSでも「信頼できる企業になら、自分の好みを伝えて最適な提案を受けたい」と肯定的な意見が目立ち始めました。
ここでデータ分類の仕組みを分かりやすく解説しましょう。データには「ファースト」から「サード」までの階層が存在します。ファーストパーティ・データとは、企業が自社サイトで自然に集まる検索履歴などの情報です。セカンドやサードパーティ・データは、他社のサイトやプラットフォーマーが収集して販売している間接的な情報を指します。これらは消費者が気づかないうちに集められている側面が強く、世界的な規制強化の対象となっているのが現状です。
消費者の「生の声」がビジネスを動かす
一方でゼロパーティ・データは、消費者が何らかのメリットを得るために自ら進んで提供する情報になります。例えば、お気に入りブランドのサンプルをもらうキャンペーンで、好きな色やサイズを回答するようなケースが該当するでしょう。マーケティングツールを開発する米チーターデジタル社のサミール・カジ最高経営責任者は、このデータの価値を高く評価しています。これまでの間接的なデータとは異なり、利用者の本当の意向がダイレクトに反映されているからです。
英ライブランプ社のマーチン・ウォレス氏も、ブログの中でこの手法がプライバシーと個別の好みに合わせたサービスの矛盾を解消すると指摘しました。企業は必要な情報を堂々と直接集められ、消費者は提供するかどうかを自分で決められます。ネットの反響を見ても「無理やり追跡される広告は不快だけど、自分で選んだ情報なら歓迎できる」という意見が多く、この双方向のコミュニケーションこそが、これからの時代に求められる健全な姿だと言えるでしょう。
日本国内でも、この動きを支援するサービスが2020年01月24日時点で本格的に始動しています。チーターデジタルの日本法人は、電通デジタルと連携して顧客の忠誠度を高めるプログラムの導入支援を開始しました。アパレルや金融といったブランド力を重視する企業を中心に、この取り組みは急速に広がっていく予想です。欧州やアメリカに続き、日本でも個人情報保護法の改正が控える中、この手法は企業にとって避けて通れない選択肢になるに違いありません。
ただし、この素晴らしい手法にも「データの量をどう確保するか」という大きな壁が存在します。勝手に集まるデータとは違い、消費者に動いてもらうには魅力的な仕掛けや信頼関係が欠かせません。分析に不可欠なボリュームを確保するために、企業が知恵を絞る時代がやってきました。単に情報を集めるだけでなく、消費者へいかに価値ある体験を還元できるかという、企業の姿勢そのものが試されていると私は強く感じています。
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