日本の夜を彩る新潮流として、今「ナイトエコノミー」が大きな注目を集めています。これは日没から翌朝までの経済活動を指す言葉です。これまでインバウンド、つまり訪日外国人観光客向けの施策として議論される傾向にありました。しかし、ここにきてエンターテインメント各社は、日本人をターゲットにした夜の仕掛けに本腰を入れ始めています。
SNS上でも「仕事帰りにふらっと寄れる大人の遊び場が増えるのは嬉しい」「夜観光の選択肢が広がる」といった好意的な声が続々と上がっています。海外に比べて夜間の娯楽が少ないとされる日本ですが、国内の消費者を巻き込むことで、景気の波に左右されない強固な夜間経済圏が誕生しようとしているのです。単なる観光客目当てではない、新しい市場の開拓が始まっています。
ゲームセンターを運営するタイトーは、2019年11月に「EXBAR TOKYO(エクスバートーキョー)」を銀座にオープンしました。ここではリストバンド型の決済システムを導入しており、18種類ものクラフトビールを注いだ分だけ手軽に味わえます。驚くべきことに、店内に設置された「スペースインベーダー」などの名作ゲームは、すべて無料でプレイ可能です。
週末は朝4時まで営業しており、まさに「大人の美味しい遊び場」として連日賑わいを見せています。少子高齢化が進む国内市場において、同社があえてゲームを無料化してまで狙うのは、ミドル世代を中心とした大人の新規需要です。SNSでは「ビール片手にインベーダーゲームができるなんて最高すぎる」と、お酒とレトロゲームの融合が大きな話題を呼んでいます。
一方、老舗の松竹も夜のエンタメ化に乗り出しています。同社は2020年3月から、役者とともに夜の日本橋を巡る「日本橋シアトリカルツアー」を開始する予定です。これは演劇の要素を取り入れた体験型の街歩きイベントで、参加者は江戸文化を体感できます。2019年1月に銀座で実施した第1弾は外国人向けでしたが、日本人からの要望が殺到したため、今回は日本語を主体に構成されました。
さらに同社は2019年4月から5月にかけて、京都南座でプロジェクションマッピング(建物の形状に合わせた映像投影技術)とDJプレイを融合させた「夜マツリ」を23時まで開催し、若者を魅了しました。伝統的な歌舞伎のイメージを覆す、最先端のデジタル技術と融合した夜間エンタメは、これまで接点が薄かった若い世代を引きつける強力な武器になっています。
こうした動きは他社にも広がっており、アミューズは2019年10月から東京湾の屋形船事業に参入しました。エイベックスも2019年2月に六本木で最新の静脈認証決済を導入したナイトクラブを開業しています。各社に共通するのは、単なる夜遊びではなく、安心かつ健全に楽しめる高付加価値なコンテンツを提供し、日本人の価値観そのものを変えようとしている点です。
私は、この国内客を重視したナイトエコノミーの活性化こそが、今後の日本経済の起爆剤になると確信しています。インバウンド依存のモデルは国際情勢に左右されやすいリスクを孕むからです。大人が罪悪感なくお金を使って夜を楽しめる文化が定着すれば、サービス業全体の底上げに繋がります。企業の持つユニークなコンテンツが、日本の夜をさらに熱く変えていくでしょう。
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