医療現場の深刻な課題である薬の調合ミスを未然に防ぐ、画期的なシステムが誕生しました。就実大学薬学部の森山圭准教授が立ち上げたスタートアップ企業「ウィズレイ」が、1回分ずつ袋に分けられた粉薬の成分をわずか4秒で判別する調剤支援装置「コナミル」を開発したのです。2020年春の製品化を目指すこの装置は、小児科など粉薬の処方が頻繁に行われる病院や調剤薬局の救世主として、今まさに大きな注目を集めています。
SNS上では「粉薬の監査は本当に神経を使うから、こうして客観的に判別してくれる機械があると心強い」「薬剤師の心理的負担が激減しそう」といった、医療従事者や現役の薬剤師の方々からの期待に満ちた声が多数寄せられています。調剤における安全性を劇的に向上させるだけでなく、過酷な現場で働くプロの精神的なお守りとしても、早くも熱い視線が注がれているようです。
コナミルは幅と奥行きが21センチメートル、高さ15センチメートルで、重さはわずか1.2キログラムと、非常にコンパクトで持ち運びやすい設計が施されています。本体上部に調剤された粉薬の袋を挟むだけで準備は完了です。装置から赤外線を照射し、薬が反射した光の波長をセンサーで計測して成分を特定する仕組みになっています。複数の粉薬が混ざっている場合でも、その配合比率の違いまで正確に見極めることが可能です。
ここで、技術の核心である「近赤外線分光分析」について簡単に解説しましょう。これは、人間の目には見えない特定の光を物質に当てることで、その分子がどのように光を吸収し、反射するかを調べる高度な分析技術です。物質ごとに光の反射パターン(指紋のようなもの)が異なる性質を利用しています。コナミルはこの技術を応用し、薬品を傷つけることなく、袋を開封しないまま一瞬で中身を特定することに成功したのです。
本体には7インチのタッチパネルが搭載されており、直感的な操作で患者ごとの処方箋データを瞬時に表示できます。万が一、調合内容に誤りがある場合は画面に「適合しません」という明確な警告が出るとともに、正しい薬の候補を提案してくれる仕組みです。病院や薬局の基幹システムとLANケーブルで接続すれば、常に最新の処方データを共有できるため、現場での運用の手間もほとんどかかりません。
この頼もしい装置は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金を有効に活用し、2019年12月から岡山県内の調剤薬局5店舗へ順次導入されて試験運用が始まっています。さらに地元の病院への設置も予定されており、2020年春まで徹底的な使い勝手の検証が行われる見込みです。実際の利用者からは「薬剤師が手薄になる時間帯でも、圧倒的な安心感につながる」と極めて高い評価を得ています。
これまで、約3000種類にも及ぶ粉薬の調剤確認は、人間の目による外観チェックや重さの測定という、属人的な手法に大きく頼ってきました。ウィズレイが薬剤師70人を対象に実施した意識調査では、なんと7割以上が「自分の鑑査や判別にミスがないか、常に不安を抱えている」という切実な本音が浮き彫りになっています。人の命を預かる現場だからこそ、見えないプレッシャーは想像以上に大きいと言えます。
私はこのコナミルの登場が、医療の質を底上げする素晴らしい一歩になると確信しています。いくらプロの薬剤師であっても人間である以上、体調や疲労度によってミスのリスクはゼロにはできません。このような最先端テクノロジーが人間の「目」を強力にサポートすることで、医療過誤を防ぎ、結果として患者の命を守ることにつながるでしょう。業務の効率化だけでなく、医療安全の観点からも不可欠な存在になるはずです。
森山准教授は「1人で業務を担当する場面でも、感覚に頼らない安全・安心・確実な調剤が実現します」と、導入がもたらす意義の大きさを力説されています。かつて東京大学や大塚製薬で研鑽を積んだ同氏の情熱は、2018年の「岡山テックプラングランプリ」での受賞や、2019年7月の起業を経て結実しました。同年のビジネスプランコンテストでも大賞を獲得するなど、そのビジネスとしての将来性は折り紙付きです。
就実大学にとっても、全4学部を通じて初めて誕生した記念すべき大学発スタートアップ企業となります。販売活動などは信頼できる他社へ委託する方針で、納品先のニーズに合わせた最適なデータベースとともに提供される予定です。設立3年目にあたる2022年7月期には年商1億円という大きな目標を掲げており、地域の知が医療の世界を大きく変える日がいよいよ現実味を帯びてきました。
コメント