EC(電子商取引)の巨大プラットフォーム、アマゾンジャパンが、従来のネット通販の枠を超え、消費者が直接商品に触れられるオフラインでの接点づくりを急速に拡大しています。これは、日本市場における特有の購買行動、つまり「実際に手にとって試したい」という強いニーズに応えるための、アマゾンの深謀遠慮と言えるでしょう。2019年6月26日時点のこの動きは、来るべき大型セール「プライムデー」を最大限に活用し、ネットショッピングに馴染みの薄い層まで顧客に取り込むための布石だと考えられます。
特に注視すべきは、2019年7月15日から16日にかけて開催されるプライムデーに向けての関連イベントの拡充です。アマゾンは、同年7月13日から、東京スカイツリータウン(東京・墨田)や湊町リバープレイス(大阪市)に加え、新たに新潟万代シティ(新潟市)でもイベントを開催する予定です。初めて新潟県で開催されるこのイベントでは、アマゾン独自の人工知能(AI)である「アレクサ」を搭載したスマートスピーカーで、実際に家電を操作できるデモンストレーションや、同年3月に国内で発売された子ども向けタブレットの体験コーナーが設けられ、来場者にAmazonデバイスの利便性を体感してもらおうと計画しています。
また、ネット通販アプリに搭載された「拡張現実(AR)」機能を紹介するコーナーも登場します。同年6月に導入されたこの「バーチャルメイク」機能は、スマートフォン上に表示した自身の顔写真に、対象となる化粧品の色や濃さを重ね合わせ、バーチャルで試せるという画期的なものです。日本ロレアルや資生堂など18ブランド、890商品もの幅広いラインナップが対象となっており、オンラインでの購買における色のミスマッチといった不安を解消し、購入への心理的ハードルを下げる効果が期待されます。このオフライン戦略について、ノア・ボルン・プライム事業本部長は、「イベントを通して通常の生活でアマゾンに触れていない人にアピールする」と語っており、アマゾンのターゲット層が明確に拡大していることが窺えます。
ECとリアル店舗の融合が生み出す新たな顧客体験
さらにアマゾンは、同年6月から自社製のタブレット「Fire(ファイア)」シリーズや、電子書籍リーダー「Kindle(キンドル)」を、家電量販店のエディオンやケーズデンキ、上新電機、ディスカウントストア大手のドン・キホーテといった実店舗でも販売し始めました。これにより、アマゾンが国内で展開するすべての自社製品が店頭で購入可能となり、その存在感を一気に高めています。これは、デバイス事業を統括するダン・コリーズ事業本部長が「日本では実際に手に触れて商品を試したいという需要が大きい」と判断した結果であり、日本の消費者の「触覚による確認」を重視する購買行動を深く理解した上での戦略的な判断と言えるでしょう。
事実、経済産業省の発表によると、2018年の国内物販市場におけるECの割合はわずか$6.22%$に留まり、買い物の9割以上が今なお実店舗で行われているのです。このデータが示すように、ネット通販が主流となりつつある現代においても、「リアル」な接点は非常に大きな意味を持っています。アマゾンが同年7月7日にオープンしたエディオンなんば本店(大阪市)にAIスピーカーの常設販売コーナーを設けたことは、その決意の表れです。現時点では、Amazonデバイスの「お試し」からネット通販への「誘導」が主な目的だと考えられますが、将来的にはリアル店舗での直接販売を通じて、新しい消費者をネット通販へとスムーズに呼び込むという、強力な相乗効果が期待できるでしょう。
このアマゾンの大胆なオフライン展開は、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。特に「Kindleを店頭で触れるのはありがたい」「実機を体験できるなら安心して買える」といった、実際に商品を試したいというユーザーの声が多く見受けられます。家電量販店やディスカウント店に拠点を設けることで、より幅広い層の目に触れ、普段アマゾンにアクセスしない層への認知度も飛躍的に向上することが予想されます。これは、オンラインとオフラインの垣根を低くし、顧客体験をシームレスに繋ぐ「OMO(Online Merges with Offline)」戦略の好例であり、他のEC事業者にとっても非常に示唆に富む動きだと、編集者としては強く感じています。
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