難関試験を突破し、国の未来を担う中央省庁の官僚たちですが、その労働環境の過酷さは限界に達しています。2020年01月28日時点で、中央省庁の残業時間は月平均100時間と民間の約7倍に及び、精神疾患による休業者は3倍という驚くべきデータが浮き彫りになりました。SNS上でも「これでは国を支える人が先に倒れてしまう」「ブラックすぎる環境を変えるべきだ」といった、危機感を募らせる声が次々と上がっています。日本の頭脳とも言える彼らが疲弊する背景には、時代遅れな業務システムがあるのでしょう。
国家公務員の過酷な長時間労働を引き起こす最大の要因は、国会対応の業務にあります。議員から事前に提出される質問への答弁書作成は極めて重要ですが、そのプロセスは信じられないほどアナログです。前日の夕方にようやく届いた質問に対し、各部局が深夜までかかって答弁を作成しているのが現状です。さらに、若手職員がその書類を大量に印刷し、自転車で国会へ届けるという驚くべき働き方が今も続いています。デジタル化が進む現代において、こうした非効率な体制には明らかな限界が来ていると言えます。
激務の裏に隠された政策立案の高速化と中核人材の危機
現場に余裕がなくなっている要因として、政策立案のスピードが格段に速まったことが挙げられます。かつては2年後の国会提出を見据えてじっくりと制度設計ができましたが、現在は問題が起きれば即座に法改正が求められる時代です。例えば、児童虐待の件数がこの10年間で増加し続けた結果、児童虐待防止法はわずか4年間で3回も改正されました。常に法改正の案件に追われ、現場を育成すべき管理職までもが心のゆとりを失っています。こうした現状が、若手の早期退職や国の政策立案機能の低下を招いているのです。
さらに深刻なのが人材配置の歪みです。深夜におよぶ国会待機が前提の職場環境では、育児中の女性職員などを激務の部局に配置することが難しくなります。その結果、時間制限なく働ける一部の優秀な職員に業務が集中するという悪循環が生まれています。霞が関を支えるこれらの中核人材が、今まさに壊れ始めているのです。実際、2019年09月に厚生労働省を退職した元医療政策企画官の千正康裕氏も、在職中にうつ病による休職を経験されました。誰もが予期せぬ形で精神を病むほど、現場は追い詰められています。
下請け関係からの脱却と国会の「視覚化」がもたらす未来
直前の質問通告が常態化する根底には、議員が圧倒的に強い「取引先」で、官僚が「下請け」という歪んだ力関係が存在します。どれほど優れた政策を練り上げても、国会を通過しなければ形にできないため、官僚側からこの関係を是正することは困難です。政策とは無関係な与党議員のスピーチ原稿作成を引き受けてしまうのも、この力関係が原因でしょう。この状況を打破する第一歩として、質問が通告された日時や審議日程が決まった日を公表し、プロセスの「視覚化」を進めることが極めて重要です。
理不尽な時間帯の質問通告が公表されれば、議員自身の評判に関わるため、通告の前倒しが期待できます。これが実現すれば深夜残業を前提とした働き方が見直され、育児中の女性なども第一線で活躍できるようになるはずです。私は、官僚の働き方改革こそが日本の未来を左右すると確信しています。彼らが心身ともに健康で、ITやタブレット端末を駆使して効率的に働ける環境が整ってこそ、真に国民のためになる良質な政策が生まれるのではないでしょうか。社会全体で霞が関の変革を後押しするべきです。
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