2016年1月15日の未明に長野県軽井沢町の入山峠付近で発生した、スキーツアーの大型バス転落事故は日本中に大きな衝撃を与えました。ガードレールを突き破り斜面へと転落した車体からは事故の激しさが物語られており、乗員乗客15人が死亡、26人が重軽傷を負うという大惨事となったのです。SNS上でも「明日は我が身かもしれない」「安さだけで選ぶのは怖い」といった、若者世代を中心に未来を奪われた学生たちを悼む声や恐怖を訴える投稿が相次ぎました。
この悲劇の背景には、驚くべき安全軽視の経営実態が隠されていたのです。運行会社と旅行会社の間では、法律で定められた運賃基準を下回る不当な安値での契約が結ばれていました。さらに、運転手への適性検査や研修も十分に行われていなかった事実が国土交通省の監査で判明しています。これらはコスト削減を優先するあまり、乗客の命を預かるプロとしての責任を放棄した極めて悪質なケースであり、二度と繰り返してはならない猛省すべき事態と言えるでしょう。
命を守るための規制強化と巧妙化する業界の課題
国の事故調査委員会が「安全を軽視した運営が事故につながった」と厳しく指摘したことを受け、国交省は貸し切りバスの規制強化へと踏み切りました。具体的には、不当な安値契約を防止するために書類への運賃下限額の記載を求める対策が導入されています。しかし、その後も旅行会社がバス会社に対して手数料の支払いを要求するなど、実質的に下限額を割り込ませる巧妙な手口が発覚しており、法律の網の目をかいくぐるような悪質な実態が浮き彫りになりました。
このような事態を重く見た国交省は、2019年度から手数料の記載も義務化するなど、さらなる安全への取り組みを継続しています。このように、手数料などを名目に実質的な支払額を減らす行為を規制することを、専門用語で「実質的下限割れの防止措置」と呼びます。命の価値は決して安さで推し量れるものではなく、私たち消費者も価格の安さだけに目を奪われず、信頼できる安全管理を行っている企業を選ぶ厳しい目を養っていく必要があるでしょう。
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