日本のビジネス界に大きな激震が走っています。経済界のリーダーである経団連は、近く公表する予定の春季労使交渉の指針「経営労働政策特別委員会報告」の中で、これまで当たり前とされてきた年功序列の賃金制度や終身雇用といった、いわゆる日本型雇用の仕組みを見直すべきだという踏み込んだ方針を明記します。デジタル化の荒波と世界規模の競争が激化する現代において、企業が生き残るためにはドラスティックな変革が欠かせないという危機感の表れと言えるでしょう。
経団連の中西宏明会長は、2020年1月14日に行われた定例記者会見において、今回の報告書の方向性を明らかにしました。例年であれば基本給を一斉に底上げするベースアップや、ボーナスの支給額に関する具体的な目安を示すことが恒例となっていましたが、今回はそうした議論への言及をあえて控えています。その代わりに、社員がやりがいを感じられるような職場環境の整備や、働き方改革の次なるステージを推進することの重要性を強く訴えかけました。
今回の提言で特に注目されているのが「ジョブ型雇用」の導入です。これは、あらかじめ個人の職務内容や勤務地、労働時間を明確に定義して契約を結び、その仕事の成果や専門性に応じて報酬を決定する評価制度を指します。これまでの日本の雇用は、職務を限定せずに会社への帰属意識を重視する「メンバーシップ型」が主流でした。今回の経団連による方針転換は、個人の能力と成果をダイレクトに評価する仕組みへと大きく舵を切ることを意味しています。
この異例とも言える発表に対して、ソーシャルメディア上でも非常に多くの意見が飛び交い、大きな反響を呼んでいます。ネット上では「成果が正当に評価されるなら大歓迎だ」と前向きに捉える声がある一方で、「欧米流の制度をそのまま導入して、都合のいいリストラ手段に使われるのではないか」という不安の声も少なくありません。特に、これまで会社に尽くしてきた中高年層の会社員からは、生活設計が崩れることを懸念するリアルな呟きが多く見られます。
編集部としては、今回の経団連による態度表明はむしろ遅すぎた決断であったと考えます。かつての高度経済成長期であれば、人材をじっくりと社内で育成できる長期雇用制度は確かに有効に機能していました。しかし、現代のように技術革新のスピードが凄まじく、常に新しいビジネスモデルを生み出し続けなければならない時代においては、従来の古い仕組みは企業のイノベーションを阻む大きな足枷になってしまう可能性が高いからです。
これからの最大の焦点は、日本の経営者たちがこれまでの便利な「メンバーシップ契約」を本当に手放す覚悟があるかという点に尽きます。日本の正社員は職務が曖昧だったからこそ、経営者側にとっては状況に応じて「何でもやらせることができる」非常に都合の良い存在でした。ジョブ型雇用が普及すれば、これまでのように社員を柔軟に使い回すことは難しくなります。問われているのは労働者側だけでなく、経営者自身の意識改革なのです。
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