世界の自動車市場を揺るがす大きなニュースが、アジアの巨大市場から飛び込んできました。中国政府は、これまで2020年中に完全に打ち切るとしていた電気自動車(EV)などの「新エネルギー車(新エネ車)」への購入補助金制度について、一転して延長する方針を固めたのです。新エネ車とは、EVやプラグインハイブリッド車、燃料電池車といった環境に配慮した次世代自動車を指す専門用語です。環境規制の波が押し寄せる現代において、この方針転換は市場に大きなサプライズをもたらしています。
中国政府が自動車政策の舵を急に切り替えた背景には、国内の深刻な販売低迷が存在します。政府は2010年から、未来の環境を見据えて購入補助金制度をスタートさせました。その効果は絶大で、2018年には国内の年間販売台数が125万台に上り、世界の新エネ車市場における約6割を中国が占めるほどの爆発的な成長を遂げたのです。市場を力強く牽引する圧倒的な存在感を見せつけ、誰もがこのまま右肩上がりに成長を続けると信じて疑いませんでした。
しかし、急激な成長の裏で政府の財政負担は数千億円規模へと膨れ上がってしまいます。事態を重く見た当局は、補助金を段階的に縮小して2020年で完全に廃止する計画を打ち出しました。この決定が、好調だった市場に冷や水を浴びせる結果となります。補助金の減額が響き、2019年の新エネ車国内販売台数は前年比4%減の120万台へと落ち込みました。市場が始まって以来、初めて前年実績を割り込むという、極めてショッキングな事態を迎えたのです。
2020年1月20日に北京で開催された記者会見において、自動車政策を統括する苗圩(みょうう)工業情報化相は、購入補助金の打ち切りを少し延ばす見通しであると言及しました。2020年までに年間販売台数を200万台にするという政府目標の達成が危ぶまれる中、背に腹は代えられないと判断したのでしょう。延長する具体的な期間はこれからの議論に委ねられますが、失速した市場のカンフル剤になることは間違いありません。
SNS上では、この発表に対して驚きと今後の展開を期待する声が相次いでいます。「補助金が継続されるなら、諦めていたEVの購入を前向きに検討したい」といった消費者の前向きな意見が目立ちます。その一方で、「政府のハシゴ外しに振り回されるメーカーは本当に大変だ」と同情を寄せる投稿も見られました。さらに、「これで世界の自動車メーカーによる開発競争が一段と激化するのではないか」という、業界の先行きを見据えた冷静な分析も寄せられています。
単なる規模の拡大である「自動車大国」から、技術力で世界をリードする「自動車強国」への転換を、中国は本気で目指しています。その国家戦略において、新エネ車の普及は一歩も譲れない生命線なのです。今回の補助金延長は、一過性の景気対策ではなく、世界の主導権を握り続けるための戦略的な一手であると私は確信しています。日本を含む世界の自動車大手が中国でのビジネス戦略をどのように修正して対抗していくのか、今後の動向から目が離せません。
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