日本のものづくりを牽引する大手電機メーカーの三菱電機が、大きな変革の一歩を踏み出しました。同社は2019年7月から、自社以外の技術やアイデアを融合させて革新的な価値を生み出す「オープンイノベーション」を目的とした「三菱電機アクセラレーションプログラム2019」を始動させたのです。約50社ものスタートアップ企業がエントリーし、4ヶ月に及ぶ熱い議論や書類選考、そしてプレゼンテーションを経て、2019年12月末の最終発表会で未来を共に創る期待の4社が選出されました。
今回選ばれた顔ぶれは、どれも独自の光る技術を持った企業ばかりです。システム開発を担うAnchorZは、本人確認などをスムーズに行う独自の認証技術を用いた強固なセキュリティー対策を提案しました。また、AI(人工知能)技術の開発で注目を集めるHACARUSは、生産現場における熟練工の作業を自動化する仕組みを提示しています。高度なデータ処理を行うAIの導入により、製造業が直面している深刻な人手不足や技術継承という課題に対して、非常に心強い解決策をもたらしてくれるでしょう。
さらに、ムセンコネクトは近距離無線通信規格である「ブルートゥース」を活用し、現場のデータを効率的に収集・分析するシステムを提案しました。そして、4社の中でも特に異彩を放っているのが鈴田峠農園です。同社は、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」技術を駆使し、移動式の緑のカーテンで猛暑対策を行うという斬新な解決策を打ち出しました。農業分野の知恵が工場の環境改善に活かされるという、まさにオープンイノベーションならではの驚きの化学反応が期待されます。
SNS上でもこの取り組みは大きな話題を呼んでおり、「大企業がスタートアップの瞬発力を取り入れるのは素晴らしい」「鈴田峠農園のアイデアが工場の過酷な暑さをどう救うのか楽しみ」といった好意的な声が多数寄せられています。三菱電機が掲げる「インダストリー(産業)」領域での新事業創出に向け、これら4社との実証実験がいよいよ始まります。自社の殻を破り、外部の斬新な視点を取り入れるこの試みは、停滞する製造業界全体に新たな風を吹き込む素晴らしい挑戦であると私は確信しています。
実は、三菱電機がここまで外部との連携を急ぐ背景には、主軸であるファクトリーオートメーション(FA)システム事業の苦戦があります。自動車の販売不振や米中貿易摩擦による中国企業の設備投資抑制が響き、産業メカトロニクス部門の営業利益率は2017年度の13%から2018年度には9.7%へと低下しました。2019年4月から2019年9月期の売上高も前年同期比6%減の6862億円と落ち込んでおり、自社だけの閉じた発想では限界があるという危機感が今回の決断へと繋がったのです。
同社はこれまでも、IoTを活用して工場の最適化を目指す「eF@ctory(イーファクトリー)」の開発を軸に他社協業を模索してきました。昨今は企業統治を巡る課題も表面化している三菱電機ですが、こうした厳しい状況だからこそ、スタートアップが持つ圧倒的なスピード感と柔軟な発想力が必要です。伝統ある技術力と最先端のアイデアが融合したとき、日本の製造業にどのような奇跡が起きるのか、今後の実証実験の成果から目が離せません。
コメント