2018年7月、広島県呉市にある美しい景勝地「音戸の瀬戸」の南口にて、貨物船とフェリーが衝突するという痛ましい事故が発生いたしました。この衝突により、フェリーの乗客と乗組員の合わせて2名が負傷しています。穏やかな瀬戸内海で起きたこの悲劇について、運輸安全委員会は2020年1月30日に調査報告書を公表しました。そこには、貨物船側による信じられないような準備不足と、安全意識の欠如が克明に記録されていたのです。
事故の舞台となった音戸の瀬戸は、古くから海上交通の「難所」として知られております。難所とは、地形が複雑であったり水路が狭かったりして、船舶の航行が極めて困難な場所のことです。実際にこの海域は、最も狭いポイントで船が通れる幅が約60メートルしかありません。さらに海岸線が複雑に入り組んでいるため、前方の見通しが非常に悪いという危険な特徴を持っています。そのため、航行には細心の注意と高度な操船技術が要求されるのです。
こうした危険を回避するため、海上保安庁は事故防止を目的とした独自の航行ルートを定めていました。具体的には、対向する船同士が左側を譲り合う形で安全にすれ違うことなどを義務付けています。しかし、衝突した貨物船の航海士は、事前に海図(海の地図や水深が描かれた案内図)のチェックを怠っていました。あろうことか、定められた正規のルートを大きく外れ、全速力でこの狭い難所を駆け抜けようとしたことが今回の調査で判明したのです。
事故当時、フェリーの乗組員は相手の貨物船も当然ルールを守るものと信じて疑いませんでした。一方で、貨物船の運行体制には重大な欠陥が潜んでいたと言わざるを得ません。当日の航海士は、他の狭い海域を航行する際にも1人で操船することが常態化しており、事故発生時も同様のワンマン体制でした。さらに、全体の指揮を執るべき船長は「通過まではまだ時間がある」と自己判断し、自室で待機したまま具体的な指示を一切出していなかったのです。
この衝撃的な報告書が公開されると、SNS上では多くのユーザーから驚きや怒りの声が沸き起こりました。ネット上では「こんなに狭い海域をワンマンで、しかも全速力で突っ込むなんて正気の沙汰とは思えない」といった批判が殺到しています。また、「乗客の命を預かるプロとしての責任感が完全に欠如している」と、運行会社の管理体制を疑問視する意見も多く見られました。誰もが安全を信じる海だからこそ、この油断に対する反響は非常に大きいものです。
私は、今回の事故は決して防げなかった天災ではなく、人災そのものであると考えます。どれほど便利な自動操縦や慣れがあったとしても、自然の難所を前に人間の慢心は決して許されません。海上の安全は、すべての船舶が共通のルールを遵守するという相互の信頼関係の上に成り立っています。1人の不注意が多くの命を危険に晒すことを、すべての海事関係者は猛省すべきでしょう。今後このような悲劇が二度と繰り返されないよう、徹底した再発防止を願います。
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