パラリンピックを観戦する上で、競技の背景にある歴史を知ると、より一層応援に熱が入るものです。今回は、多くのドラマを経て現在の姿となった「知的障害クラス」にスポットを当ててみましょう。このクラスは、国際知的障がい者スポーツ連盟によって「知能指数(IQ)が75以下」であり、なおかつ「日常生活における適応能力の障害が明確であること」が出場条件として厳格に定められています。
歴史の幕開けとなったのは1996年8月16日に開幕したアトランタ大会でした。ここで初めて陸上と水泳の2種目で知的障害の選手たちの参加が認められたのです。さらに、1998年3月5日からの長野冬季大会ではクロスカントリーが初採用され、選手たちの活躍の場は冬の舞台へも広がっていきました。一歩ずつ、しかし確実に彼らの努力が世界に認められる道が開かれていった時代と言えるでしょう。
続く2000年10月18日からのシドニー大会では、卓球とバスケットボールが新たに加わり、大会は大きな盛り上がりを見せました。しかし、ここでパラリンピックの歴史を揺るがす大事件が起きてしまいます。男子バスケットボールで金メダルに輝いたスペイン代表チームの選手12人のうち、なんと10人が健常者だったことが後から発覚したのです。この前代未聞の不正行為は、世界中に大きな衝撃を与えました。
この悲しい不祥事を受け、厳格な審査が困難であるという理由から、知的障害クラスはすべての競技から一斉に排除されるという厳しい処分が下されてしまいます。真摯にスポーツと向き合ってきた選手たちの努力が、一部の不正によって奪われてしまったこの決定には、当時から多くの同情と悲しみの声が寄せられていました。スポーツの祭典における公平性の難しさを物語る、痛ましい出来事です。
しかし、関係者たちの懸命な不正防止対策への取り組みにより、2012年8月29日に開幕したロンドン大会でついに陸上、水泳、卓球の3競技が奇跡のカムバックを果たしました。SNS上でも「おかえりなさい!」「今度こそ公平な舞台で輝いてほしい」といった温かい歓喜の声があふれ、多くの人々がこの復帰を祝福しています。そして、いよいよ迎える東京パラリンピックでも、この3競技が実施される予定です。
全日本知的障がい者スポーツ協会の斎藤利之会長は、夏のパラリンピックでこれ以上の種目を増やすことは現状では厳しいと見込んでいるものの、冬季パラリンピックでの競技復帰には強い期待を寄せています。筆者としても、過去の過ちを乗り越えて進化を遂げた選手たちが、東京の舞台で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、偏見のない純粋な視線で全力の応援を送り届けていきたいと考えています。
東京パラリンピックで輝く!注目の知的障害種目一覧
今大会で行われる知的障害クラスの全種目は、すべて男女別に開催され、リレーでは男女2人ずつがチームを組む混合スタイルで競われます。まず「陸上」では、瞬発力とスピードが求められる走り幅跳び、400メートル、砲丸投げに加え、息をのむ駆け引きが見どころの1500メートルが実施され、陸上トラックを華やかに彩るでしょう。
「水泳」では、200メートル自由形や100メートルの背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライといった各種目のほか、万能な泳ぎが求められる200メートル個人メドレーが行われます。さらに、チームワークが鍵を握る混合4×100メートルフリーリレーも目が離せません。そして「卓球」では、1対1の息詰まる心理戦と高速ラリーが展開されるシングルスが開催され、世界一の座をかけた熱い戦いが繰り広げられます。
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