世界中で急速に広がりを見せる新型コロナウイルスの影が、ついに私たちの経済にも色濃く落とされ始めました。投資家の間では先行きへの不安が急速に強まっており、日本の経済を牽引する株式市場にもその動揺がダイレクトに現れています。
実を言いますと、2020年1月30日の東京株式市場において、日経平均株価が約3ヶ月ぶりに心理的な節目とされる2万3000円の大台を割り込んでしまいました。前日からの下げ幅は401円に達し、終値は2万2977円を記録するという、異例の急落劇となっています。
インターネット上のSNSでも、この株価急落は大きな話題を呼んでおり、「インバウンド需要が完全にストップしてしまうのではないか」「自分の保有している株がどこまで下がるか見当もつかない」といった、悲痛な声や今後の経済を心配する書き込みが相次いでいる状況です。
この市場の冷え込みを先導したのが、海外投資家による積極的な売り注文でした。世界保健機関、いわゆるWHOによる緊急事態宣言の発出を警戒した世界のお金が、中国ビジネスに深く関わっている企業の株式から一斉に引き揚げられたことが、今回の急落のトリガーを引いたとされています。
とりわけ深刻な打撃が予想されているのは、訪日外国人客による消費行動を指すインバウンド関連の業界でしょう。日本への観光客が激減することで、これまで日本の消費を支えてきた巨大な市場が一時的に機能不全に陥るリスクが、現実味を帯びて目の前に迫っています。
航空大手のANAホールディングスが明かした数字は、まさに現在の危機の深刻さを象徴していると言わざるを得ません。傘下の全日本空輸によれば、2020年2月における中国路線の予約状況は、中国発が前年比で半減、日本発も約4割減少するという驚くべき事態に直面しています。
さらに、中国の春節と呼ばれる旧正月期間中の旅客数も前年を1割下回っており、経営陣からは今後の路線運休や減便の検討すら示唆されました。業績へのネガティブな影響を懸念する声は日増しに強まっており、航空業界全体のビジネスモデルが試される局面を迎えています。
ただ、私は今回の危機を単なる一時的なパニックとして片付けるべきではないと考えております。感染症がグローバル経済に与える不確実性は極めて高く、企業には目先の利益だけでなく、こうした予期せぬリスクに耐えうる頑強な経営体質の構築が今こそ求められているはずです。
影響は空の便だけに留まらず、私たちの身近な鉄道やホテル、さらには製造業にまでドミノ倒しのように波及しつつあります。JR東日本では、すでに乗車券の払い戻しやグループホテルにおける団体旅行のキャンセルが目立ち始めており、現場には緊張感が走っている模様です。
また、高級時計「Gショック」を中国市場で広く展開しているカシオ計算機でも、現地にある広東省の工場や上海市の販売会社を2020年2月9日まで休業させる措置を決定しました。主力事業の売り上げの多くを中国に依存している同社にとって、この決断は大きな痛手となるでしょう。
市場の専門家からも、宿泊利用客の半数以上を外国人客が占める帝国ホテルなどの高級宿泊施設において、中国からの宿泊需要や国内のレジャー控えによって業績予想を引き下げる動きが出ています。経済の連鎖的な冷え込みは、私たちが想像する以上に早く進んでいる印象です。
このように、目に見えないウイルスの恐怖は、瞬く間に企業業績への警戒感へと姿を変え、アジア全体の株式市場をも包み込んでいます。各企業がこの未曾有の事態をどう切り抜け、投資家の信頼を勝ち戻していくのか、私たちは市場の動向を冷静に見守る必要があるでしょう。
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