中部の地方銀行が、これまでの大卒を中心とした採用方針を大きく変え始めています。静岡銀行が27年ぶりに高校新卒の採用を再開することを決め、東海エリアの金融界に大きな衝撃が走りました。さらに2020年4月には名古屋銀行で10年ぶり、中京銀行でも4年ぶりに高卒の新入行員が誕生する予定です。これにより、中部の主要な地方銀行8行のうち、過半数を超える6行が高卒採用に踏み切ることになります。
この背景には、地方の深刻な人口流動が関係しています。地方銀行、通称「地銀(ちぎん)」とは、特定の地域を基盤にして、地元の企業や住民への融資、資産運用などをサポートする地域密着型の銀行のことです。地銀の採用担当者は、都市部の大学へ進学した後に地元へ戻って働く「Uターン就職」を希望する学生が減少している現状を明かします。そのため、地元を愛し、地域を熟知している高校生が貴重な戦力として見直されているのでしょう。
この驚きのニュースに対し、SNS上でも大きな反響が巻き起こっています。「地元密着の優秀な高校生が活躍するのは素晴らしい」「大卒ばかりにこだわらない柔軟な姿勢が、これからの時代には必要だ」といった前向きな意見が目立ちます。一方で、「それだけ銀行の採用活動が厳しくなっている証拠ではないか」という、現在の金融業界を取り巻く厳しい環境を冷静に分析する鋭い書き込みも寄せられており、世間の関心の高さが窺えます。
自動車産業などの製造業が盛んな中部地域では、優秀な人材の獲得に向けて競合する金融機関同士が手を取り合うという、異例の連携劇も始まっています。十六銀行、百五銀行、名古屋銀行の3行は、若手行員が登壇する会社説明会などを合同で開催し、業界の魅力をアピールしています。さらに、2021年5月に合併を控える三重銀行と第三銀行は、2021年春に卒業する学生を対象とした採用活動において、新入行員の合同採用へと舵を切りました。
長引くマイナス金利政策などにより、地銀を取り巻く収益環境は決して楽観視できるものではありません。現場からは「かつてに比べて就職を希望する学生が集まりにくくなっている」という本音も漏れ聞こえます。だからこそ各行は、実際の業務を体験する「インターンシップ(就業体験)」の内容を充実させ、仕事のやりがいを深く理解してもらうことで、優秀な人材とのミスマッチを防ごうと必死の工夫を凝らしているのです。
一連の動きから、地銀の採用は単なる「学歴」重視の時代から、真に地域へ貢献できる「人間性」や「地元愛」を重視する時代へシフトしていると私は感じます。人口減少や経済の変化という逆風の中でも、地元で生まれ育った若い力が銀行を支え、ひいては地域経済を活性化させる原動力になるはずです。こうした従来の枠組みに囚われない柔軟な採用変革こそが、これからの地銀が生き残るための鍵となるに違いありません。
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