旅行離れが囁かれる若い世代に向けて、星野リゾートが非常にユニークな一手へと打って出ました。同社は2017年から、20代や30代の若者をメインターゲットとした新ホテルブランド「BEB(ベブ)」を展開しています。このブランドの目玉は、なんといっても35歳以下のゲストだけが利用できる、驚きの格安定額プランです。驚くほどリーズナブルな価格設定が、いまSNSを中心に大きな注目を集めています。
インターネット上では「星野リゾートにこの価格で泊まれるなんて信じられない」「友達同士で朝まで部屋飲みするのに最高すぎる」といった歓喜の声が続出している状況です。星野佳路代表が「ライバルは居酒屋やカラオケ」と公言する通り、このホテルは従来の宿泊施設の常識を心地よく覆しています。単に観光の拠点として泊まるだけでなく、仲間と過ごす空間そのものを楽しむ若者の本音に見事に寄り添っているのでしょう。
その象徴とも言えるのが、2019年2月5日に長野県軽井沢町で開業した第1号施設「BEB5 軽井沢」です。こちらでは、シーズンによる価格変動が一切ない「エコひいきプラン」を導入しています。1泊1室あたり15,000円(税別)という、3人組なら1人5,000円で泊まれる破格の安さを実現しました。この思い切った定額制の仕組みによって、宿泊客の7割以上を35歳以下の若者層が占めるという大成功を収めています。
BEBが提案しているのは「居酒屋以上、旅未満」という絶妙なルーズさです。24時間いつでも飲食の持ち込みができるお洒落なカフェラウンジや、翌日の12時チェックアウトという心にくい設定が、タイトなスケジュールを好まない若者の心に深く刺さっています。こうした、これまでの贅沢を極めた「星野リゾート」のイメージとは対極にあるような気軽さこそが、現代の若者たちが求めていた新感覚の旅行スタイルなのだと感じます。
そして2020年3月19日には、待望の2施設目となる「BEB5 土浦」が茨城県土浦市に誕生します。現在、土浦市では自転車を活用した地域活性化に注力しており、新施設ではサイクリングと宿泊を融合させた「輪泊(りんぱく)」という斬新なスタイルを提案していく方針です。こちらの施設でもエコひいきプランが用意され、1泊1室なんと12,000円(税別)という、さらに手頃な価格設定で年間稼働率8割を目指しています。
観光庁のデータによれば、2018年の国内延べ宿泊者数のうち、日本人の数は前年比2.2%減少の4億2,043万人と、国内旅行の需要は冷え込みを見せています。中高年層に依存したビジネスモデルのままでは、将来的にホテル業界全体が縮小してしまうのは火を見るより明らかです。若者たちが旅の楽しさを知るきっかけを今から提供していく試みは、星野リゾートのみならず、業界の未来を守るための極めて重要な防衛策だと言えます。
同社はこのBEBを入り口として、将来的に「界」や「星のや」といった上位ブランドのファンになってもらうという、10年、30年先を見据えた壮大なリピーター戦略を描いています。外資系大手のマリオットも若者向けブランド「モクシー」を国内展開するなど、若者獲得の競争は激化の一途を辿るでしょう。この新業態で若者の心を完全に掴めるかどうかが、今後の星野リゾートの成長を占う最大の鍵になりそうです。
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