私たちが日常的に行っている「家族の介護」ですが、その裏には単なる愛情だけでなく、驚くべき経済的なメカニズムが潜んでいるのかもしれません。東北大学の若林緑准教授は、一見すると無償に見える家族介護について、非常に興味深い視点を提示しています。実はこれ、SNS上でも「確かに見返りを期待してしまうかも」「家族だからこそシビアな問題」と、多くの共感と驚きの声を集めているトレンドワードなのです。
親の世話をすることに伴う「機会費用」、つまり介護のために仕事を休んだり諦めたりすることで失う利益の見返りとして、遺産や生前贈与が機能しているという考え方があります。学術的にはこれを「交換動機モデル」と呼びますが、親が老後の面倒を見てもらった代償として、住宅や資産を子どもに提供するという仕組みです。さらに進んだ「戦略的動機モデル」では、親が複数の子どもの中から、実際に介護をしてくれた子どもに手厚く遺産を配分するとされています。
神戸大学のチャールズ・ユウジ・ホリオカ氏の研究によると、驚くべきことに日本人はアメリカ人よりも「介護をしてくれた子どもにのみ遺産を残す」と答える割合が高いそうです。この結果から、日本の家庭には戦略的動機モデルが強く当てはまることが浮き彫りになりました。もちろん、家族を想う利他心や温かい愛情が原動力であることは間違いありませんが、現実問題として介護には多大な負担と費用が伴うのも事実でしょう。
世間では介護業界の人手不足が叫ばれて久しいですが、サービスの質を向上させるには、現場で働く職員の報酬や賃金を引き上げることが不可欠です。しかし、公的な介護サービスを維持するためには、給付と負担のバランスを根本から見直さなければならない局面を迎えています。ここで鍵となるのが、専門知識の格差を示す「情報の非対称性」という概念です。要介護度が重い場合、専門家による適切な介入がどうしても必要となります。
一方で、要支援などの軽度なケースでは、専門家との情報格差が小さいため、公的保険に頼り切らない仕組み作りが可能です。現金給付や利用券を配る「バウチャー制度」を導入し、家族や地域社会の自助・共助に委ねる選択肢も視野に入るでしょう。これからの時代は、公的支援の限界を認めつつ、家族の絆と経済的インセンティブを賢く融合させた、持続可能な新しい介護のカタチを模索していくべきだと私は強く確信しています。
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