2020年1月27日、産業医科大学で公衆衛生学を専門とする松田晋哉教授が、これからの地域医療のあるべき姿について提言を行いました。教授が特に重要視しているのは、「総合診療医」を一つの地域に複数名配置するという体制の構築です。総合診療医とは、特定の臓器だけでなく、患者さんの健康状態を包括的に診る力を持つ医師を指します。いわば、身体の悩みをなんでも相談できる「頼れるかかりつけの要」のような存在といえるでしょう。
なぜいま、この職種が注目されているのでしょうか。それは、超高齢社会となった日本において、複数の持病を抱える患者さんが急増しているからです。単一の診療科だけでは対応が難しい複雑な症例に対し、総合診療医がコーディネーターとして機能することで、患者さんはよりスムーズで的確なケアを受けられるようになります。松田教授の提言は、病院が分断された専門性を提供するのではなく、地域全体で患者さんを守るネットワークへの転換を促すものといえます。
症例数と執刀数が物語る「医療の質」
また、同日報じられた日経実力病院調査の内容も、非常に示唆に富むものでした。特に脳動脈瘤の治療において、手術の成功や予後を左右するのは、その医療機関がどれだけの症例数を経験し、医師がどれだけ執刀しているかという実績です。脳動脈瘤とは、脳の血管の一部が膨らむ病気ですが、専門的な高度技術が必要な手術であるため、日頃から多くの症例に触れているチームこそが、最も信頼できる選択肢となるのでしょう。
この調査結果に対し、SNS上でも大きな反響が巻き起こっています。「実績に基づいた病院選びがもっと一般化すべきだ」という意見や、「専門医の偏在を防ぎつつ、地域医療の質を担保する仕組みが必要だ」といった建設的な議論が交わされています。患者さんにとっては、どの病院で治療を受けるかという決断が命に関わるため、客観的なデータに基づいた情報は、何よりも価値ある羅針盤となるはずです。
私個人としても、松田教授の提言は、医療の「量」から「質と連携」へ舵を切るための極めて合理的な一手だと考えます。地域に根差した包括的な診療と、高度な専門性を維持する集約化された医療機関。この二つの車の両輪がうまく機能することこそが、今後の安心な医療体制を築く鍵となるのではないでしょうか。一人ひとりの患者さんが、その時に必要な最善のケアにアクセスできる環境を、社会全体で支えていく必要があるはずです。
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