日本酒を原価で楽しむ新常識!「日本酒原価酒蔵」中村雄斗社長が仕掛けるリピーター獲得の経営マジック

居酒屋業界に新しい風が吹いています。定額の入館料を支払うだけで、厳選された日本酒を市場の原価と同等の価格で堪能できる「日本酒原価酒蔵」が、多くのお客心を掴んで離しません。2015年4月に待望の1号店をオープンさせてから5年も経過しないうちに、瞬く間に20店舗を突破するほどの急成長を遂げました。この革新的なビジネスモデルを牽引するのが、運営会社であるクリエイティブプレイスの中村雄斗社長です。

SNS上でも「有名銘柄が驚きの安さで飲める」「少しずつ色々な種類を試せて楽しい」といった歓喜の声が溢れており、トレンドに敏感な若者や女性を中心に話題となっています。中村社長は「日本酒が持つ真の価値を世界へと発信していきたい」と熱く胸の内を語ります。圧倒的な支持を集める背景には、従来の飲食店の常識を覆す緻密な戦略と、リピーター獲得への並々ならぬこだわりが隠されていました。

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大手の経験からわがままを原動力にした独立へ

中村社長は学生時代の就職活動のときから、将来的な独立を明確に見据えて活動していたといいます。ベンチャー企業にはいつでも挑戦できる一方で、大企業の組織としての仕組みを新卒という貴重なカードで学ぶ意義は大きいと判断しました。大学を卒業した2010年に全日空商事へと入社し、組織の巡り方を実体験として吸収します。その後、1年7ヶ月ほどの勤務を経て、自らの理想を追求するために退職を決意しました。

毎朝の満員電車に揺られる苦痛から解放されたいという素直な気持ちや、自身のわがままな性格が良い意味で起業への引き金になったと笑顔を見せます。かつてアルバイトを共にした気心の知れた仲間たちと、新しい事業を立ち上げる約束を交わしたことが始まりでした。もちろん独立に対する恐怖心はゼロではありませんでしたが、それ以上に組織に留まり続ける人生を選ぶことの方が恐ろしいと感じたそうです。

営業の自信から始まった挑戦とリピーターの壁

数ある産業の中で飲食店を選んだ理由は、学生時代に経験した居酒屋の客引きアルバイトで培った、絶対的な営業の自信にありました。通行人のわずかな視線の変化や反応を見逃さず、心に刺さる言葉を投げかけるのがコツだそうです。飲み放題の安さに魅力を感じる人もいれば、個室というキーワードに反応する人もいます。さらに会話を3往復させることで、お客様との信頼関係を一気に構築する特技も磨きました。

2012年7月に念願の居酒屋1号店を出店すると、売上は順調に伸びて利益も確保できました。しかし、そこには最大の課題として、何度も足を運んでくれるリピーターが全くいないという現実が立ちはだかります。顧客の総数や使われる金額に上限がある飲食業界において、リピーターの不在は将来的な売上減少を意味します。ここで中村社長は「飲食店とはリピーターを獲得するビジネスである」という本質に気づきました。

偉大な経営者たちの問いかけから生まれた日本酒専門店

ビジネスの転機となったのは、外食産業を牽引する3人の偉大な経営者たちとの出会いでした。牛角の創業者である西山知義氏、サイゼリヤの正垣泰彦氏、そしてエー・ピーカンパニーの米山久氏から、世の中に提供できる自社ならではの価値は何かと厳しく問いかけられたのです。この深い思考の末にたどり着いたのが、まだ世の中に普及していなかった、リーズナブルに楽しめる日本酒専門の居酒屋というアイデアでした。

一般的な日本酒専門店は敷居が高く高価なため、頻繁に通うことが難しいのが現状です。その常識を覆して日本一の専門店を作ることができれば、独自の存在価値を発揮できると確信しました。国内の日本酒消費量が全体として落ち込む中で、純米酒以上の特定名称酒は微増傾向にあります。ここに目をつけ、有名銘柄を原価で提供するという、飲み放題とは一線を画す画期的なアイデアを形にしました。

新鮮さを保つ100ミリリットル小瓶と徹底した禁煙空間

お店では、日本酒を100ミリリットルの特製小瓶に移し替えて提供するという珍しい手法を採用しています。一升瓶のままだと空気に触れる時間が長くなり、お酒の酸化が進んで風味が劣化してしまうからです。小瓶に詰め替えることで新鮮さを維持できるうえ、スタッフが一度にたくさんの注文を運べるという業務効率化のメリットも生み出しました。さらに、オープン当初から店内を完全禁煙にしています。

周囲からは反対の嵐が巻き起こりましたが、タバコの煙で日本酒の繊細な香りが損なわれては、本当の価値を伝えることはできません。このこだわりは、お酒本来の魅力を五感で楽しんでもらうための譲れない一線でした。また、飲んだ銘柄を忘れないようにカードを配布したり、2018年5月に配信を開始して会員数が18万人に達したアプリを活用したりして、お客様の記憶に残り続ける仕組みを構築しています。

驚異の成長を支えるデータ戦略とこれからの展望

クリエイティブプレイスの2019年の売上高は、前年比で22%増となる12億4千万円を記録し、右肩上がりの成長を続けています。この好業績を強力に支えているのが、店長たちの評価基準であるKPI(重要業績評価指標)に、アプリのダウンロード数などを組み込んだ戦略です。現場での積極的な声がけが生まれ、これまで日本酒に馴染みの薄かった若い女性層の心を見事に射止めました。

現在は直営とフランチャイズを合わせて20店舗を展開していますが、全国の主要な駅を分析すると、70店舗までは十分に拡大できる余地があると考えています。類似の業態が登場する中で、今後は居心地の良い空間づくりのための設備投資を強化し、売上とのバランスを緻密にコントロールしていく方針です。「経営はポーカーと似ている」と語る32歳の中村社長が仕掛ける挑戦から、今後も目が離せません。

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