独自の世界観でファンを魅了し続ける自動車メーカーのSUBARU(スバル)が、未来に向けて大きな一歩を踏み出しました。同社は2030年までに、世界で販売する新車のうち、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)をはじめとする電動車の割合を4割以上に引き上げるという意欲的な目標を発表したのです。現在、同社の電動車比率は約2%にとどまっているため、今回の決断はまさに劇的な方向転換と言えるでしょう。
中村知美社長は、2050年までに新車が排出する二酸化炭素を2010年比で90%削減するという壮大な青写真を描いています。この環境目標を達成するための試金石が、今回の「2030年までに電動車4割以上」という目標なのです。しかし、中村社長は決して盲目的に突き進んでいるわけではありません。世界各国の市場がどのように変化していくのか、消費者の動向を慎重に見極めながら柔軟に計画を推進していく構えを崩さないのが印象的です。
インターネット上では、この大胆な発表に対してスバリストと呼ばれる熱狂的なファンを中心に大きな反響が巻き起こっています。SNSでは「ついにスバルも本格的に電動化か」と時代の流れを感じる声が上がる一方で、「あの独特なエンジン音が消えてしまうのではないか」と寂しさを滲ませる意見も少なくありません。伝統と革新の狭間で揺れるファンの心理は、同社への期待の裏返しと言えます。
エンジン車からの脱却には、当然ながら収益面での大きな壁が立ちはだかります。従来のガソリン車と比較して、ハイブリッド技術を搭載することは車両の製造コストを押し上げる要因になるからです。中村社長もコスト高になる現実に触れつつ、技術の組み合わせによって徹底的なコストダウンに取り組む姿勢を強調しました。世界中で異なる電動化の進展スピードに合わせ、地域ごとの最適なラインアップが求められています。
米国市場の課題とトヨタとの強力なタッグ
特にスバルの主戦場である米国市場では、電動車の浸透に苦戦を強いられているのが現状です。現在はプラグインハイブリッド車(PHV)である「クロストレック」を展開していますが、中村社長は「はっきり言って売れていない」と率直に現状を明かしました。現地の消費者がまだ価格に対する価値を見出せていないためですが、今後の環境規制の強化に伴い、電動化へのシフトは確実に訪れると予測されています。
独自の走行性能にこだわるスバルにとって、環境規制への対応は死活問題となります。そこで大きな武器となるのが、トヨタ自動車との協業です。スバルは2020年代前半に、トヨタと共同開発したEVを市場に投入する計画を進めています。最終的なEV時代の到来を見据えつつ、それまでの過渡期を生き抜くための選択肢を増やす戦略を採りました。
一方で、スバルは自社のオリジナル技術も決して手放してはいません。独自の簡易型ハイブリッドシステムであるマイルドハイブリッド「eボクサー」を開発し、これを搭載した人気多目的スポーツ車(SUV)の「フォレスター」を日本や中国、欧州へと広く展開しています。マイルドハイブリッドとは、発進時などに小型モーターがエンジンを補助する仕組みのことで、燃費向上と軽快な走りを両立させる優れた技術です。
自動車メディアの視点から言えば、今回の電動化シフトはスバルのアイデンティティを揺るがしかねない大勝負だと感じます。これまでは「水平対向エンジン」や「AWD(全輪駆動)制御システム」といった、独自の走りのメカニズムがファンの心を掴んできました。しかし、トヨタの電動技術を共有するとなれば、他社との走りの違いを表現することが従来よりも難しくなることは避けられません。
アイサイトで切り拓く未来の安全性能
他ブランドとの明確な差別化こそがスバルの生命線であり、その突破口となるのが伝統の安全性能です。中村社長が「安全を最優先に考えるスバルのDNA」と語る通り、運転支援システムの「アイサイト」は業界をリードしてきました。これは、人間の目のように機能する2つの「ステレオカメラ」で前方の状況を認識し、衝突を回避する先進の安全技術のことです。
2020年後半に発売を予定している新型「レヴォーグ」には、カメラの視野を大幅に広げた次世代のアイサイトが搭載される予定となっています。この進化により、高速道路の渋滞時において、ドライバーがハンドルから手を離して走行できる画期的な運転支援機能の実現を目指しています。技術共有が進む時代だからこそ、こうした一点突破の強いこだわりが、これからのスバルを支えるカギになるに違いありません。
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