北海道の玄関口である札幌市の中心部が、いま、エネルギー分野における先進的な取り組みで大きな変貌を遂げようとしています。これは札幌市と地元企業である北海道ガス(北ガス)が強力に連携し、JR札幌駅周辺の地下に「発電する都市」の基盤を築いているためです。その核となるのは、高い環境性能と災害対応力を兼ね備えたコージェネレーションシステム、すなわち「熱電併給システム」で、電気と熱を効率よく生み出す先端的な街づくりを目指しているのです。
この取り組みの目玉として、北ガスは2019年6月までに、JR札幌駅周辺の地下に総出力約3万キロワットにもおよぶコージェネレーション設備を設置しました。これは、もし大規模停電(ブラックアウト)が発生したとしても、必要な電気と熱を自給自足できるようにするための重要な布石です。特筆すべきは、そのエネルギー効率が8割を超えるという点でしょう。この驚異的な高効率を実現することで、持続可能な都市運営と環境負荷の低減を同時に達成しようとしているのです。
🏙️地下に眠る巨大なエネルギー供給源「北ガス札幌発電所」
このプロジェクトの象徴的な存在が、2019年6月にJR札幌駅の北側に移転した北ガスの新本社地下に設けられた「北ガス札幌発電所」です。この地下コージェネ設備は、一般家庭およそ4万世帯分に相当する1万5,600キロワットもの出力を持ち、2019年7月末からの営業運転開始が予定されています。新本社自体も、フリーアドレス制の部分導入や、各地に分散していた供給管理拠点の集約を行うなど、新しい働き方と効率化を追求しています。
札幌発電所を含めると、JR札幌駅から半径約1キロメートル圏内の地下には、都市ガスを燃料とするコージェネ設備が合計6カ所も設置されており、その総出力は2万8,900キロワットに達します。これは、北ガスが石狩市に建設したガス火力発電所の出力の3分の1を超える規模です。都市そのものが巨大な発電機能を持つという、全国的にも極めて珍しい街づくりの事例であり、その先進性に注目が集まっています。
この「地下発電所」網の整備は、札幌市が2018年3月に策定した都心エネルギーマスタープランの主要な柱の一つであり、北ガスと市が連携を深める確固たる基盤となっています。札幌発電所は北ガスが所有していますが、残りの5カ所の設備は、札幌市も2割を出資している子会社、北海道熱供給公社が保有するなど、公的な関与も大きい事業であることが分かります。
💡高効率の鍵は「排熱利用」!コージェネレーションの仕組み
このプロジェクトの最大の強みは、コージェネレーションシステムの活用によるエネルギー効率の高さにあります。北ガスの前谷浩樹取締役の説明によると、発電出力を高めすぎなかったのは、発電時に発生する「排熱」を最大限に有効活用するためだそうです。コージェネレーションとは、発電と同時に発生する熱エネルギーも冷暖房やお湯などに利用するシステムのことで、エネルギーの無駄を極限まで減らすことが可能なのです。一般的な火力発電所のエネルギー効率が約4割程度であるのに対し、このシステムでは燃料から得られるエネルギー効率を8〜9割にまで高めることができるとされています。
この熱エネルギー(温水)は、地下に張り巡らされた温水パイプ(熱導管)を通じて、札幌市の中心部に分配されます。熱を捨てずに活用することで、結果として二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも大きく貢献できるのです。これは環境意識の高まりや、持続可能な社会の実現が叫ばれる現代において、非常に意義深い取り組みであると言えるでしょう。
🛡️「災害に強い街」を実現するCEMS(セムス)構想
このシステムは平時の高効率運用だけでなく、災害時のレジリエンス(回復力)強化にも大きく貢献します。実際に、2018年9月に発生した北海道全域での大規模停電の際も、地下コージェネ設備はオフィスビルへの給電を継続し、災害対応の一端を担いました。北ガスは、将来的に札幌発電所の周辺に独自の送電線を敷設し、本社を含む区画全体をCEMS(地域エネルギー管理システム)で統合管理する構想を描いています。
CEMSとは、一定のエリア内にある施設すべてのエネルギー使用状況を一箇所で一括管理できる仕組みのことで、すでに市内では北4東6地区にその拠点が設置されています。コージェネレーションを中核としたCEMSを構築することで、大規模停電のような非常時にも、そのエリア内への給電を継続することが期待できるのです。最終的には、複数のCEMSを相互に接続し、災害時でも広範囲で自立給電が可能な都市の実現を目指すという北ガスのビジョンは、都市の安心・安全を格段に高めるものとなるでしょう。
この札幌市と北ガスによる「発電する都市」づくりは、単なるインフラ整備に留まらず、エネルギーの効率化、環境負荷の低減、そして何よりも市民の安全を確保するという、未来の都市モデルを提示しています。特に、自然災害が多い日本において、エネルギーを地域内で完結させ、非常時にも機能を維持できるレジリエントな都市の実現は、全国の自治体にとっても一つの理想形となるでしょう。SNSでも「札幌すごすぎ!」「全国で真似してほしい」といった、この先進的な取り組みに対する期待の声が寄せられており、今後の展開から目が離せません。
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