芥川龍之介が暴く『桃太郎』の不都合な真実!岡山・総社の聖地巡礼で見えるダークなパロディの魅力とは?

誰もが幼い頃に親しんだ童話のヒーローといえば、桃太郎を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、文豪・芥川龍之介が1924年に発表した短編小説『桃太郎』に登場する主人公は、私たちが知る「正義の味方」とは180度異なる姿をしています。

作中の彼は、なんと怠け者で強欲、そして傲慢な人物として描かれているのです。このあまりにも衝撃的な人間観察の鋭さは、ネット上でも「現代の風刺にも通じる」「ダークすぎるけれど面白い」と、SNSを中心に大きな反響を呼んでいます。

物語の始まりからして異次元のスケールです。遥か昔、天を突くほどの霊山に1万年に1度だけ赤子を宿す桃の実がなり、それが八咫烏(やたがらす)につつかれて川へ流れてきたという設定が明かされます。

八咫烏とは日本神話に登場する、3本の足を持った導きの神鳥のことですが、そんな神秘的な背景を持ちながらも、成長した桃太郎は畑仕事が大嫌いな乱暴者に育ってしまいました。厄介払いをしたい老夫婦は、喜んで彼を鬼退治へと送り出します。

お供の犬や猿、キジを引き連れる際も、彼はなんと団子を半分しか与えません。飢えに苦しむ家来たちを巧みな言葉で丸め込む姿は、狡猾なリーダーそのものだと言えるでしょう。

そんな物語の舞台を体感すべく、2020年02月15日、記者は岡山県へと向かいました。まずは桃太郎のモデルとされる「大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)」を祀る、岡山市の吉備津神社を訪問します。

国宝に指定されている荘厳な本殿を抜け、長い回廊を進むと、退治された鬼の首が埋められているとされる「御窯殿(おかまでん)」にたどり着きます。ここでは今も、釜の鳴る音で吉凶を占う神秘的な神事が執り行われています。

巫女さんのお話によると、良い兆しのときには船の汽笛のような「ぼぉ〜」という音が響き渡るそうです。歴史の深さと、どこか恐ろしくも美しい伝承が今なお息づいている様子が肌で感じられました。

続いて訪れたのは、総社市にある「鬼ノ城(きのじょう)」です。実は物語の鬼ヶ島は海の上ではなく、標高約400メートルの山の中に存在していました。

ここはかつて、大吉備津彦命に平定された渡来人(海外から日本列島へ移住してきた人々)の温羅(うら)一族の城跡とされています。2.8キロメートルに及ぶ壮大な城壁跡からは、かつての圧倒的な権勢と、切ない歴史のロマンが漂っていました。

芥川の小説の中では、鬼ヶ島は平和な楽園として描かれます。音楽を愛し、のんびり暮らしていた鬼たちを、飢えた桃太郎の一行が襲撃して宝を強奪するという、正義の逆転劇が展開されるのです。

しかし、物語はめでたしめでたしでは終わりません。生き残った鬼たちの復讐に、桃太郎は生涯怯え続けることになります。因果応報とも言えるこの結末は、人間のエゴイズムを痛烈に批判しているように感じられます。

ただの美談で終わらせない芥川龍之介の冷徹な視点こそ、現代を生きる私たちに「本当の正義とは何か」を問いかけている気がしてなりません。ぜひ皆様も、一味違う桃太郎の足跡を辿る旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

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