歌舞伎座2020年2月公演の見どころを徹底解説!仁左衛門3兄弟が魅せる、亡き父に捧ぐ至高の追善狂言と豪華絢爛な舞台のすべて

東京・銀座の歌舞伎座では、往年の名優である十三世片岡仁左衛門の二十七回忌を偲ぶ特別な公演が、2020年2月26日までの日程で開催されています。今回は、その血脈を受け継ぐ片岡我當さん、片岡秀太郎さん、そして当代の片岡仁左衛門さんの3兄弟が、それぞれ主役級を担う「追善狂言(ついぜんきょうげん)」を披露することで大きな話題を呼んでいるのです。追善狂言とは、亡くなった優れた役者を追悼し、その功績を称えるためにゆかりのある演目を上演することを指します。

この記念すべき舞台において最大の注目を集めているのは、当代の仁左衛門さんが主役の菅丞相(かんしょうじょう)を演じる「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の三幕でしょう。かつて「神品(しんぴん)」、つまり神業とまで称えられた亡き父の至高の芸を継承し、何度も演じ重ねてきた仁左衛門さんの演技は、すでに独自の境地に達しており、揺るぎない安定感を誇っています。人間でありながら神格化されていくという、非常に表現が難しいこの大役に挑む姿は、まさに圧巻の一言に尽きるはずです。

物語の始まりを告げる「加茂堤(かもづつみ)」の場面では、中村勘九郎さんの演じる桜丸と、片岡孝太郎さんの八重が、爽やかで瑞々しい空気を劇場全体に送り届けてくれます。さらに、中村米吉さんの斎世君と、故人のひ孫にあたる片岡千之助さんの苅屋姫が並び立つ姿は、まるで命が吹き込まれた雛人形のように美しく、観客の目を釘付けにしました。SNS上でも「若手陣の輝きが素晴らしく、客席が一気に華やいだ」といった感動の声が数多く寄せられています。

続く「筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)」は、物語の後半に向けた重要な伏線が含まれる非常に興味深い場面ですが、実は上演される機会が極めて少ない貴重な一幕です。中村梅玉さんが演じる源蔵と、中村時蔵さんによる戸浪のコンビは息がぴったりで、独自の魅力を放っています。芸の伝授は許されたものの勘当までは許されないという、源蔵の胸の内に秘めた苦悩を梅玉さんが見事に表現されている一方で、子供を救出する後半の緊迫感には、まだ少し硬さが見られるかもしれません。

そして、本公演のハイライトである「道明寺(どうみょうじ)」では、坂東玉三郎さんが覚寿(かくじゅ)役を務め、並々ならぬ情愛を舞台上に表現されています。ただ、その愛情が強く前面に出ている分、この役柄が本来持っている厳格さや格調高さが、少し控えめに感じられる点には好みが分かれるところでしょう。中村歌六さんの土師兵衛は敵役としては立派すぎる印象があり、坂東弥十郎さんの宿禰太郎とともに、もう少し芝居全体のテンポや弾みがあっても良いと感じられます。

しかしながら、千之助さんの苅屋姫が全力で健闘している姿や、勘九郎さんの水奴、孝太郎さんの立田による基本に忠実な美しい演技が舞台を引き締めていることは間違いありません。夜の部では、我當さんが父親にとって最後の舞台となった思い出深い演目「八陣守護城(はちじんしゅごじょう)」を万感の思いを込めて熱演されています。最後は秀太郎さんが、梅玉さんを相棒に迎えて「道行故郷の初雪(みちゆきふるさとの はつゆき)」を情緒豊かに舞い、一日の幕を美しく閉じます。

この他にも、玉三郎さんと勘九郎さんによる華麗な踊り「羽衣(はごろも)」や、尾上菊五郎さんが主演を務める人情味あふれる「文七元結(ぶんしちもっとい)」が華を添えています。ここでは、中村莟玉さんのお久に対し、養父である梅玉さんが鳶頭(とびがかしら)として出演するという、ファンにはたまらない特別な配役も用意されました。これほどの豪華な顔ぶれが揃い、一丸となって伝統の舞台を創り上げる姿は、まさにラグビー日本代表のような素晴らしいチームワークだといえます。

これだけの歴史と熱量が詰まった公演は滅多に観られるものではなく、歌舞伎ファンならずとも足を運ぶ価値がある特別な機会です。伝統を守りながらも、それぞれの役者が新たな命を吹き込む歌舞伎座の客席で、極上の芸能に酔いしれてみてはいかがでしょうか。

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