ものづくりの未来を占う?コイルセンター出荷量から読み解く日本の製造業と建築市場の現在地

私たちの身の回りにある自動車や家電製品、そして日々利用するオフィスビルなどには、多くの鋼鉄が使われています。こうした製品や建造物のベースとなる薄い板状の鋼材を、大きなロール状に巻いたものを「コイル」と呼びます。このコイルを仕入れて、需要に合わせて加工・販売する専門業者が「コイルセンター(CC)」です。

実は、このコイルセンターの出荷量を見比べることで、日本を支える製造業の生産意欲や、建築市場が今どれくらい活気にあふれているかをダイレクトに推し測ることができます。いわば、日本の景気の先行きを映し出す重要な「経済の体温計」とも言える存在なのです。

現在、全国コイルセンター工業組合がまとめているデータによると、2019年度の年間出荷量は4年ぶりに前年度の実績を割り込む可能性が濃厚になっています。すでに判明している2019年4月1日から2019年12月31日までの累計出荷量は1213万トンに留まり、前年の同じ時期と比べて3.4%もの減少を記録しました。

SNS上でもこのニュースは注目を集めており、「いよいよ景気後退の足音が聞こえてきた」「五輪後の反動が早くもデータに出ている」といった、今後の動向を不安視する声が相次いでいます。特に2019年の夏場を過ぎてからの落ち込みは顕著で、市場には危機感が漂い始めています。

分野ごとに詳細を見ていくと、これまで牽引役だった自動車業界では完成車メーカーごとに明暗が分かれる結果となりました。さらに、産業機械分野にいたっては非常に厳しい状況に直面しています。こうした主要セクターの足並みの乱れが、出荷量の押し下げに直結したと考えられます。

もう一つの柱である建築分野も元気がありません。2020年の東京五輪に向けた関連工事がひと段落した一方で、首都圏の次なる大規模再開発が本格化するまでの狭間の時期、いわゆる「端境期(はざかいき)」に入ってしまったため、資材の動きがすっかり鈍くなっています。

現場からは「2018年度が過去10年でもトップクラスの好調さだったため、その反動はある程度覚悟していた。しかし、2019年度の停滞は事前の想定をはるかに超えており、落差に戸惑っている」という切実な声も聞かれ、業界全体が想定以上の冷え込みに頭を悩ませています。

このような需要の減退に歩調を合わせる形で、2019年の夏頃から鋼板の流通価格も下落に転じました。市場の買い手が減少すれば、当然ながらモノの価格も下がっていきます。この相場の弱気な基調は、買い手市場が続く限りしばらくは反転することが難しいでしょう。

さらに追い打ちをかけるように、新型肺炎の感染拡大によるサプライチェーンの混乱など、各産業の景気を一段と冷え込ませる新たな不安要素も浮上してきました。目先で劇的に需要が回復しそうな明るい材料が見当たらない点も、市場の悲観論に拍車をかけています。

私個人の視点としても、このコイル出荷の減少は単なる一業界の不振に留まらず、日本経済全体の足腰が弱まっている兆候だと捉えています。五輪特需という一時的なカンフル剤が切れた今こそ、製造業や建設業は付加価値の高い次世代技術への投資を急ぐべきではないでしょうか。

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