【MRJの軌跡と挑戦】国産ジェット「90席」を事実上縮小。「スペースジェット」70席型開発で米国市場に賭ける三菱航空機の覚悟

日本初の国産ジェット旅客機として期待を集めてきた「三菱リージョナルジェット(MRJ)」事業が、2019年5月29日付の報道で、事業方針を大幅に見直すという大きな転機を迎えました。三菱重工業傘下の三菱航空機は、現在開発中の座席数90席モデルの事業を事実上縮小し、代わりに最大市場である米国の需要に合致した一回り小型の70席モデルを新たに開発する方針を固めたのです。この決断は、長年にわたる開発の遅延と、それに伴う市場環境の厳しさを物語っています。

この事業方針の見直しは、米国市場特有の**「スコープ・クローズ」**という壁にぶつかったことが最大の原因です。スコープ・クローズとは、米国の航空会社とパイロットの労使協定によって、地域間を飛行する航空機の座席数などに上限が設けられているルールを指します。MRJが開発をスタートした2008年当時は、この協定が緩和されるという観測が支配的でしたが、現時点では緩和が実現していません。このままでは世界最大の米国市場で販売できないと判断し、70席モデルの開発に踏み切らざるを得なくなったのです。

三菱航空機は、新機種の投入に合わせて、機種名をMRJから**「スペースジェット」**へと改めます。新機種では仕様を大幅に刷新し、小型化に合わせて部品調達の一部を米国に切り替えるなど、燃費性能と合わせてコストを売りにする戦略です。しかし、この方針転換にはリスクも伴います。現行の90席モデルから新機種に切り替えを希望する顧客が出た場合、新機種の型式証明(TC)取得は早くても2022年以降と見られており、納期のさらなる遅れにつながる可能性があります。

SNS上では当時、「国産ジェットの夢はどこへ」「また延期か」といった失望の声や、「戦略の失敗ではないか」といった厳しい意見が飛び交う一方で、「米国市場を狙うなら70席は必須」「思い切った戦略転換は評価できる」といった賛否両論が交錯していました。MRJは1965年のYS11以来となる国産民間旅客機として、これまでに6000億円超の開発費が投じられており、まさに三菱重工の社運をかけた一大プロジェクトです。

コラムニストとしての私の見解ですが、今回の事業見直しは、開発当初の甘い市場予測を修正し、現実の厳しい市場環境に適合させるための**「苦渋の決断」**だったと言えるでしょう。しかし、70席モデルの市場では、ブラジルのエンブラエルやカナダのボンバルディアといった強力な先発メーカーがすでに牙城を築いています。MRJが5度の納入延期という過去の遅れを取り戻し、世界的な競合他社にどこまで食い込めるか。この「スペースジェット」への改名は、日本の航空産業の未来をかけた、最後の挑戦の始まりを意味しているのかもしれません。

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