日本の建設業界を牽引する大成建設が、いよいよ海外市場での本格的な巻き返しに打って出ます。同社は2019年04月にエンジニアリング本部の大胆な組織改編を断行し、海外戦略の要となる「国際プロジェクト室」を新たに立ち上げました。この新組織の設立により、日系企業の進出が目覚ましい東南アジア地域での受注拡大を狙う構えです。これまでは国内で情報を収集してきましたが、今後は現地に深く入り込むことで、ライバル他社を一気に追い抜く戦略を明確にしています。
SNS上では、この大成建設の積極的な動きに対し「ドバイでの苦い経験を乗り越え、ついに再始動か」「ゼネコンがコンサル業務まで手厚くサポートするのは心強い」といった、期待を込めた声が数多く上がっています。2019年度の海外受注高目標を、前年度の実績から87%増となる1400億円に設定した点からも、同社の並々ならぬ決意が読み取れるでしょう。過去の損失を糧に、盤石な収益基盤を築き上げた今だからこそ、再び世界という大舞台に挑戦する準備が整ったと言えます。
エンジニアリングという「技術コンサル」の強み
今回の戦略で鍵を握る「エンジニアリング」とは、単に建物を建てる施工業務だけを指すのではありません。工場の製造ラインや電力プラント、排水処理施設など、内部の設備やシステム全体を最適に設計・管理する高度な技術分野を指します。大成建設の高浜信一郎執行役員が語るように、この部門の強みは「設計前の段階から顧客に寄り添うコンサルティングが可能」な点にあります。建てるだけでなく、生産性を最大化するための知恵を売ることが、受注への近道となるのです。
これまでの営業スタイルでは、施主が具体的に工事を依頼する段階で情報を得ることが一般的でした。しかし、国際プロジェクト室は、さらに上流の「事業企画」や「フィジビリティスタディ(実現可能性調査)」の段階からアプローチを開始します。フィジビリティスタディとは、プロジェクトが採算に合うか、法的に問題ないかを事前に詳細に分析する作業のことです。この調査段階から企業の相談に乗ることで、深い信頼関係を築き、自社の設計や施工の受注へと確実につなげていく狙いがあります。
具体的には、タイのバンコクやベトナムのホーチミン、ハノイといった重要拠点に、エンジニアリング本部の精鋭5名をほぼ常駐させる体制を整えました。現場に技術者が常駐することで、医薬品や食品メーカーといった専門性の高い顧客が抱える悩みに対し、その場ですぐに技術的な解決策を提示できるのが最大のメリットです。スピーディーなレスポンスは、変化の激しい東南アジア市場において、他社との差別化を図るための大きな武器となるに違いありません。
ライバルを猛追する大成建設の新たな決意
現在、大手ゼネコンの間では海外エンジニアリング事業の競争が激化しています。先行する鹿島建設はシンガポールの企業を買収し、大林組もタイの現地法人に強力な部門を持つなど、ライバルたちはすでに足場を固めている状況です。出遅れを指摘されることもある大成建設ですが、2020年度を最終年度とする中期経営計画では「海外事業の拡充」を最優先課題として掲げました。長年培ってきた国内での信頼を背景に、今度は東南アジアという新たなフィールドでその実力を証明する時が来ました。
私自身の見解としても、今回の大成建設の試みは非常に理にかなった戦略だと感じます。労働人口の減少により国内市場が成熟する中で、製造業の海外移転が進む日系企業のニーズを、現地の最前線で掴み取る姿勢は極めて重要です。単なる「箱作り」の建設会社から、顧客のビジネスの成功を支援する「パートナー」へと進化しようとする同社の姿勢は、今後の日本のゼネコンが進むべきひとつの理想的な姿を示しているのではないでしょうか。

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