自動車産業が大きな転換期を迎える中、静岡県沼津市に拠点を置くスグロ鉄工が、電気自動車(EV)市場の拡大を見据えた大胆な攻めの姿勢を見せています。同社は2019年07月03日、今後2年間で約5億円という巨額の投資を行い、本社工場の生産能力を大幅に強化することを発表しました。この投資は、単なる増産ではなく、次世代車両の製造に不可欠な精密部品の供給体制を整えるための重要な一手と言えるでしょう。
今回の増産計画の中心となるのは、自動車部品を成形する金型に欠かせない「コアピン」と呼ばれる特殊な部品です。このコアピンは、エンジンやトランスミッションなどの複雑な形状を鋳造する際、金型の内側で穴や凹凸を作るための柱のような役割を果たします。EV化が進むことで、ガソリン車特有の複雑なエンジン部品は減少しますが、一方でモーターケースやバッテリー関連の新型部品には、これまでとは異なる形状の金型が大量に必要となるのです。
最新鋭のレーザー積層技術が実現する驚異の生産スピード
スグロ鉄工が導入を進めるのは、鉄粉をレーザーで積み上げて形を作る革新的な設備です。これは「金属3Dプリンター」に近い技術で、従来の電気で鉄を溶かす加工方法では数日を要していた大型部品の製造時間を、半分以下にまで短縮させます。この劇的な効率化によって、2020年までに3機の新鋭機が稼働する予定です。納期の大幅な短縮は、スピード感が求められる開発現場において、同社にとって非常に強力な武器になるに違いありません。
SNS上では、こうした地方企業の技術革新に対して「日本のものづくりを支える屋台骨」「EV時代になっても金型の重要性は変わらない」といった期待の声が多く寄せられています。特に、金型の摩耗しやすい部分だけを交換可能にする設計思想や、1本単位の細かなオーダーに応える柔軟な対応力は、職人技と最新テクノロジーの融合として高く評価されています。小回りの利く生産体制こそが、大手メーカーが最も頼りにするポイントなのでしょう。
原隆英社長は、市場全体が縮小傾向にある中でも、顧客の「困り事」を解決し続けることで独自の地位を築けると自信をのぞかせています。実際に、同社の売上高は毎年1割ずつの成長を続けており、2019年03月期の売上高16億円から、2022年03月期には20億円の大台を目指す計画です。トヨタや日産、ホンダといった国内トップメーカーからの信頼が厚いのも、同社が持つ防錆や冷却に関する卓越した技術力があるからこそです。
私自身の見解としても、今回のスグロ鉄工の決断は非常に賢明であると感じます。EV化を「危機の到来」と捉えるのではなく、形状の変化を「新たなチャンス」と捉えて最先端設備を導入する姿勢は、変化の激しい現代において生き残るための正攻法です。特定の部品に固執せず、変化するニーズに即応できる技術基盤を持つことは、今後のサプライヤーに求められる最大の資質ではないでしょうか。同社の挑戦は、地域経済の活性化にも大きく貢献するはずです。
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