近年、政府が「2025年までにキャッシュレス決済比率を4割へ高める」という目標を掲げている中で、日本の決済市場は大きな変革期を迎えています。現状のキャッシュレス比率は約2割と先進国の中でも低い水準ですが、消費増税や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、今後は市場の急成長が予測されているのです。野村総合研究所の試算によると、クレジットカードや電子マネー、プリペイドカード、そしてデビットカードを合わせた利用額の合計は、2024年までに122兆円を超える見込みで、特にデビットカードの伸びが注目されています。
このデビットカードとは、支払いと同時に代金が銀行口座から即座に引き落とされる仕組みの決済サービスを指します。そして現在、そのデビットカードとスマートフォン(スマホ)のアプリが融合した「スマホデビット」が相次いで登場し、注目を集めているのです。野村総合研究所の上級コンサルタントである田中大輔氏は、このスマホ決済サービスの登場がデビットカード利用拡大の一因であると分析されています。これは、従来のスマホ決済の主流であった「後払い」のクレジットカード登録方式や、事前入金して利用する「前払い」方式に加え、「即時払い」という選択肢が加わることを意味しており、消費者の決済体験を大きく変える可能性を秘めているでしょう。
実際に、2018年3月にみずほ銀行が「みずほWallet」を、さらに2019年にはじぶん銀行が「じぶん銀行スマホデビット」、ゆうちょ銀行が「ゆうちょPay」をスタートさせるなど、各金融機関がこの分野に参入しています。これらのサービスは、利用時にそれぞれの預貯金口座から代金がリアルタイムで引き落とされる仕組みです。また、りそな銀行と埼玉りそな銀行の「りそなウォレットアプリ」のように、即時払いに加えて、前払いや後払いも選択できる多様なサービスも登場しています。さらに、この秋からは多数の金融機関が参加を予定している「Bank Pay(バンクペイ)」の開始も控えており、これは一つのアプリに最大8つの金融機関を登録して引き落としに利用できるという、利便性の高いサービスとして期待が寄せられます。
スマホデビットの魅力とメリット:使いすぎの心配がない即時決済
スマホデビットの最大の魅力は、使いすぎの心配を大幅に減らせる点にあります。この決済は、連携した預貯金口座の残高の範囲内でしか支払いができないため、**「口座の残高=利用限度額」**となります。そのため、クレジットカードで起こりがちな、想定外の出費や翌月の支払いへの不安を感じることが少なくなるでしょう。また、導入のハードルが低いことも大きなメリットです。クレジットカードとは異なり、原則として申込時の審査が不要です。
加えて、利用者の年齢制限が緩やかな点も見逃せません。クレジットカードは原則として高校生を除く18歳以上が対象ですが、デビットカードは、金融機関のキャッシュカードをそのまま利用できる「Jデビット」であれば年齢制限がなく、国際ブランドの加盟店で使える「ブランドデビット」でも中学生を除く15〜16歳から利用可能です。そのため、特に若い世代や、クレジットカードの利用に抵抗がある方にとって、非常に受け入れられやすい決済手段と言えるでしょう。デビットカード自体には、キャッシュカードとしてそのまま支払いに使える「Jデビット」と、JCBなどの国際ブランドの加盟店で使える「ブランドデビット」の2種類がありますが、スマホデビットはこれら従来のデビットカードをスマホアプリで利用できる形だと理解していただければ良いでしょう。
高まる利便性:加盟店の相互開放で地方にも広がるか
スマホ決済の方式には、お店のバーコードやQRコードを読み取る方式と、ICチップを埋め込んだスマホを専用機器にかざす非接触方式の2種類があります。どちらの方式も、決済に利用できるのは加盟店に限られるという点には注意が必要です。しかし、この加盟店網の広がりも急速に進んでいます。「みずほWallet」や「じぶん銀行スマホデビット」は、JCBの非接触決済サービス「QUICPay(クイックペイ)」の加盟店で利用できるため、現時点で約89万カ所と利用できる場所が豊富です。
一方で、「ゆうちょPay」は、ゆうちょ銀行が独自に開拓した加盟店に加え、横浜銀行や福岡銀行などが導入する決済システム「銀行Pay」の加盟店でも利用可能です。この「銀行Pay」と、秋に始まる予定の「Bank Pay」は加盟店の相互開放を検討している状況にあるとのことで、これが実現すれば、利用店舗数は都心部だけでなく地方にも広がり、より多くの方がスマホデビットの恩恵を受けられるようになるでしょう。決済サービスに詳しいポイ探の菊地崇仁代表は、決済手段を選ぶ基準として、「日常的に買い物をする店で使えるかどうかを基準に自分に合った決済手段を選ぶことが重要」と助言されています。キャッシュレス決済が多様化する中で、ご自身のライフスタイルに合った「即時払い」のスマホデビットは、ぜひ一度試してみていただきたい決済手段です。
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