🔥令和初の大型倒産! 太陽光発電の優良企業 PCIを襲った「W災難」とは?【企業信用調査マンの分析】

日本中が「平成」から「令和」への改元という慶事と、最大10連休となったゴールデンウィーク(GW)の祝賀ムードに包まれていた最中、太陽光発電システム事業を展開していたパシフイック・コースト・インダストリー(PCI社)にまさかの事態が発生しました。毎年GW明けには一定数の企業が倒産すると言われますが、川崎市に本拠を置くPCI社も例外ではなかったのです。令和元年5月1日に同業者へ事業を譲渡した後、GW明けの5月8日に東京地方裁判所へ自己破産を申し立てたのです。累計1万2000件を超える施工実績を誇り、得意先からの評価も非常に高かった同社に、一体何が起こったのでしょうか。

PCI社は、バブル景気が終焉を迎えようとしていた1990年12月に設立されました。当初は戸建住宅の内装工事からスタートしましたが、2002年以降は住宅用ソーラーパネルの設置工事を主力事業へと転換。さらに2011年からは、大規模な産業用メガソーラー発電施設のパネル設置工事の請負を開始し、急速に事業を拡大させていきました。地元神奈川県内ではトップクラスの売上を誇り、特に大手電機メーカーの太陽光発電システムの工事特約店として上位の工事件数を手がけるなど、その技術力と信頼性は業界でも際立っていたのです。

安定した受注を確保できた背景には、PCI社の明確な強みがありました。具体的には、豊富な施工経験を持つ職人を多数抱えていたこと、施工時の事故やトラブルが極めて少なかったこと、そして同業他社が敬遠しがちな分野(例えば、陸屋根の住宅)の施工を得意としていたことです。このような同業者との差別化が、価格競争に陥らない高評価の受注を可能にしていました。この結果、同社は業績面でも順調に推移し、ピーク時の2016年6月期には年売上高約32億7100万円を記録。直近の2018年6月期まで長年にわたり黒字基調を維持していたことからも、得意先からの信頼の厚さがうかがえます。太陽光発電の普及拡大という波に乗り、まさに順風満帆に見えた優良企業だったと言えるでしょう。

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急拡大したメガソーラー事業の功罪

近年、PCI社の事業の中心は法人向けのメガソーラー工事へとシフトしていました。直近の売上構成比を見ると、産業用を中心とするメガソーラー事業が約85%を占め、住宅用ソーラーパネル取付事業が13%、メンテナンス事業その他が2%という状況でした。メガソーラー案件は、1件あたり1億円を超える大型受注も複数あり、これが売上を大きく牽引していました。しかし、この大型化・高額化したメガソーラー事業こそが、後に同社の経営を揺るがす大きなリスクとなったのです。

メガソーラー事業への参入以降、売上は確かに大きく伸びましたが、同時に設備購入や用地取得に伴う借入金も増加しました。また、工事規模の拡大に伴い、必要な運転資金も膨れ上がっていきました。同社は毎期少しずつ利益(内部留保)を蓄積してはいましたが、2018年6月期末時点の純資産合計は2億800万円でした。億単位の現場を複数抱える企業としては、万が一の事態に備えるための財務基盤が、決して盤石とは言えない水準だったと言わざるを得ません。私の意見としては、成長スピードに比べてリスク許容度を超える規模での経営拡大を選んでしまった、いわゆる**「身の丈経営」の難しさ**を露呈した事例だと考えます。

連続した「W災難」が資金繰りを直撃

順調な事業展開に見えたPCI社を、2018年に入ってからメガソーラー事業で2つの「災難」が立て続けに襲いました。一つ目の災難は、土地付き権利取引(いわゆるID取引)に絡むものでした。ID取引とは、太陽光発電施設の土地と電力会社への接続権利をセットで売買する取引のことです。PCI社が土地造成・パネル設置を請け負った茨城県の工事現場で、発注者が購入したID(接続権利)が他社へ二重に譲渡されていたことが工事完了後に判明したのです。これにより、同社が受け取るはずだった3億円強の工事代金が、最終的に一部の支払いにとどまり、巨額の損失を被ることになりました。

そして、さらに追い打ちをかけたのが、2018年夏に西日本を襲った「平成30年7月豪雨」です。PCI社が7億円強で請け負っていた岐阜県の工事現場が豪雨に見舞われ、施工現場一帯が流失し、造成工事のやり直しが必要になったのです。発注者から納期の厳守を厳しく求められる中、下請け業者への既施工分の支払いに加え、追加費用の支払いも発生。一部の下請け業者が工事を続行しなかったため、別の業者を探して工事を続ける必要が生じ、その支払いも重なり、資金繰りは一気に逼迫しました。これらのトラブルによる立て続けの資金流出が響き、2018年末頃には資金繰りが窮地に陥ってしまったのです。

土壇場で見つけた「ホワイトナイト」と事業の承継

2019年に入ると、PCI社はメガソーラー設置工事の発注者へ工事代金の前払いを依頼するなど、綱渡りの資金繰りを強いられました。2月上旬頃からは、事業継続と従業員の雇用を守るため、水面下で事業譲渡先の選定に着手しました。当初、交渉していた同業者とは2月末に決裂。3月にも複数の同業者へ打診を試みましたが、難航し、一時は事業廃止も覚悟するほどの瀬戸際に追い込まれました。しかし、土壇場のタイミングで**「ホワイトナイト」、つまり救済者が現れたのです。

名乗りを上げたのは、既存の取引先の同業者でした。この同業者は、すでに取引を通じてPCI社の事業内容や職人の技術力を高く評価していたため、財務調査(デューデリジェンス)などを省略し、すぐに支援を表明**。さらに、事業譲渡までの必要資金も提供してくれました。そして、改元の祝賀ムードのさなかの令和元年5月1日に、ソーラーパネル取付部門(メガソーラー事業を除く)とメンテナンス部門の事業譲渡が実行されたのです。事業譲渡を完了した後、5月8日にPCI社は破産により清算されることとなりましたが、雇用を希望した従業員は譲渡先に承継され、事業廃止という最悪の事態は回避されました。

2018年度の太陽光関連業者の倒産件数は96件と、5年連続で増加し、過去最多を更新しています。この中には詐欺まがいの企業も散見されますが、PCI社は間違いなく**「玉」の部類に入る優良企業でした。得意先関係者からも「仕事は相当あった」と言われるほど、破綻直前まで受注は豊富だったのです。この事例は、メガソーラーという大型工事のリスクの重さ、そして企業の純資産(自己資本)が足りなかったことが破産を招いたことを示しています。リスクを取り過ぎた経営の怖さを、私たちにあらためて考えさせる令和初の大型倒産**だったと言えるでしょう。

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