2019年6月28日から29日にかけて、大阪市で「20カ国・地域(G20)首脳会議」が開催されます。この国際的な会議は、米中首脳会談も予定されており、世界中から大きな注目を集めるでしょう。大阪の「都市格」を向上させる絶好の機会であり、これを活かした強力なPRが求められます。2025年の万博開催や、カジノを含む統合型リゾート(IR)構想など、大阪にはかつての勢いを取り戻すための追い風が吹いている状況です。
しかし、IR構想については、ギャンブル依存症やマネーロンダリング(犯罪によって得た収益の出所を分からなくする行為)への懸念から批判も根強く、政府によるIR実施に向けた基本方針の公表は秋以降に先送りされる見通しとなっています。もちろん、これらの対策を強化することは必要不可欠です。IRの成功例とされるシンガポールでも、構想が持ち上がった2000年代の当初は、同国の「建国の父」であるリー・クアンユー氏でさえ反対しましたが、最終的には息子のリー・シェンロン首相が「最終責任は私が取る」として解禁に踏み切った経緯があります。
シンガポールがIR事業者に求めたのは、単にカジノを運営することだけではありませんでした。ホテルや国際会議場、そして展示場などの施設整備を義務付け、その上で、同国が将来的に伸ばしたいと考える水ビジネスや医療・バイオテクノロジーといった分野に関連する国際会議や展示会を、戦略的に誘致したのです。これにより、IRを新産業育成のプラットフォームとして機能させることに成功しました。一方、日本では「カジノ」という側面ばかりが強調されがちですが、大阪の復権のためには、シンガポールのように新しい産業の創出と育成に焦点を当てるべきだと私は考えます。
世界が熱視線を送るMICEの重要性
新しい産業を創出・育成するためには、最新の情報や技術が一堂に会する国際会議や展示会といった活動、すなわち「MICE」が極めて重要になります。「MICE(マイス)」とは、Meeting(企業等の会議)、Incentive Travel(報奨・研修旅行)、Convention/Conference(国際会議)、Exhibition/Event(展示会・イベント)の頭文字をとった言葉で、多くの集客と経済効果をもたらすビジネスイベントの総称です。大阪観光局の東條秀彦MICE専門官は、「国際会議や展示会は、最新の情報が集まり、イノベーションや産業創出に直接結びつく」と指摘しています。
実際、2019年5月に大阪で初めて開催された「関西統合型リゾート産業展」では、IRの巨大事業者に加えて、パナソニックやNECといった日本を代表する企業が、顔認証や健康チェックに関する最先端の新しい技術を披露しました。これは、IRを核とする新たなビジネスチャンスを模索する、まさにMICEの力が発揮された瞬間と言えるでしょう。単なるギャンブル施設ではなく、最先端技術や情報が集積するビジネスのハブとしてIRを位置づけることで、大阪の成長は格段に加速すると確信しています。
国際会議協会(ICCA)の調査によると、2018年の都市別国際会議件数では、東京は前年の18位から13位に上昇したものの、シンガポールが8位、バンコクが10位、香港が12位と、アジアのライバル都市が上位に名を連ねています。シンガポールはMICE施設を継続的に拡充しており、バンコクやソウルも同様に激しい都市間競争を繰り広げているのです。この激しい国際的な競争において、大阪がこのチャンスを活かせなければ、都市の競争に乗り遅れてしまうことになりかねません。
G20や万博、そしてIRといった大きな波を捉え、国際会議や展示会を呼び込むMICE戦略に注力することこそが、大阪の真の復権への道だと強く感じます。単に外国人観光客を誘致するだけでなく、質の高いビジネスとイノベーションを呼び込む戦略こそが、持続的な成長を可能にするでしょう。
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