アメリカのメディア業界に、大きな地殻変動が起きています。2019年08月13日、テレビ放送大手のCBSと、映画製作や音楽チャンネルを抱えるバイアコムが、ついに経営統合することで合意に達しました。かつて一つの企業体だった両社が再び手を取り合うのは、実に13年ぶりの出来事となります。今回の決定により、売上高が約3兆円にものぼる巨大なコンテンツ集団が誕生する見通しですが、この動きは単なる「復縁」ではなく、生き残りをかけた必死の防衛策と言えるでしょう。
バイアコムは、若者に人気の音楽チャンネル「MTV」や、名作映画を数多く生み出してきた「パラマウント・ピクチャーズ」を傘下に持っています。一方でCBSは、全米3大ネットワークの一つとして圧倒的な存在感を誇ります。この両者が統合すれば、世界180カ国以上で視聴契約を持つ、米国シェア首位のテレビ・映画連合が誕生するのです。SNS上では「懐かしのブランドが一つになる」と驚きの声が上がる一方で、「配信全盛の時代にテレビの巨人はどう戦うのか」という冷静な分析も目立っています。
「IT巨人」による破壊的イノベーションがもたらした再編の波
なぜ今、これほどまでの大型合併が必要だったのでしょうか。その背景には、ネットフリックスやアマゾンといった新興勢力の急速な台頭があります。彼らは「サブスクリプション」と呼ばれる定額制の動画配信モデルを武器に、既存の放送ビジネスを脅かしています。サブスクリプションとは、月額料金を支払うことで膨大な映画やドラマをいつでも楽しめるサービス形態のことです。この利便性に、従来のテレビ局は視聴者を奪われ続けているのが現状なのです。
こうした事態を受け、他社もなりふり構わず巨大化を推進しています。2019年に入り、ディズニーが21世紀フォックスの主要事業を飲み込み、通信大手のAT&Tもタイムワーナーを巨額で買収しました。これらは、次に普及が見込まれる高速通信規格「5G」時代を見据えた戦略でもあります。スマホで高品質な動画を視聴するのが当たり前になる未来において、魅力的なコンテンツを自社で抱え込むことは、もはや企業の生命線であると確信しているのでしょう。
しかし、今回のCBSとバイアコムの連合ですら、市場の評価は決して楽観的ではありません。新会社の時価総額は合計で300億ドル程度と予測されていますが、これはネットフリックスの1400億ドルという規模には遠く及びません。売上高では上回っていても、将来の成長性を期待する株式市場の期待値では、配信事業で出遅れている既存メディアは苦戦を強いられています。巨大化したはずの新会社が、投資家の目にはまだ「小粒」に映ってしまうのが現実なのです。
私は、今回の合併はあくまで序章に過ぎないと見ています。統合を主導したオーナー一族のシャリ・レッドストーン氏は、すでに次なる買収相手を探す意欲を隠していません。規模の拡大を止めれば、すぐにIT巨人に飲み込まれてしまうという危機感の表れでしょう。今後はソニー・ピクチャーズエンタテインメントのようなコンテンツ制作会社も再編の標的になる可能性が高く、視聴者が目にするエンタメの景色は、ここ数年で劇的に変わっていくはずです。
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