長年にわたり鉄道車両の整備・点検で確かな実績を築いてきた堀江車両電装(東京・千代田)が、今、新たな事業の柱として注力しているのが、障害者の就労支援サービスです。これは、単に企業の一時的な取り組みにとどまらず、社会の課題解決に貢献する持続可能なビジネスとして注目を集めています。同社は、身体や精神に障害を持つ方々を受け入れ、実習を通じて本人の適性を見極めながら最適な就職先を紹介しています。さらに、就職後も継続的に相談に応じるなど、手厚いサポート体制を構築しているのが大きな特徴でしょう。
特に、同社が展開するマッチングサービス「トライアングル」は、障害者を採用したい企業と就職を希望する方々をつなぐ架け橋となっています。平日の昼下がりには、就職活動中の男性がオフィスを訪れ、「自閉症のため、人と話すことに少し苦手意識があるのですが、仕事を探しています」と打ち明ける場面もありました。これに対し、女性社員はすぐに「多様な求人がありますから、じっくり探していきましょう」と応じ、登録リストから最適な求人情報の検索を開始する、という非常にきめ細やかな対応が日々行われているのです。
🎁手厚いサポートとノウハウ:就職前から就職後まで一貫した支援体制
堀江車両電装がこの障がい者支援事業部を立ち上げたのは2014年のことでした。このサービスでは、ジョブコーチや社会福祉士といった専門資格を持つ社員が、利用者一人ひとりの相談に乗っています。ジョブコーチ(職場適応援助者)とは、障害者が職場にスムーズに適応し、長く働き続けることができるように支援する専門家のことです。また、社会福祉士は、福祉に関する相談援助を行う国家資格を持つ専門家であり、これらのプロフェッショナルが支援にあたるため、利用者は安心してキャリアの相談ができるでしょう。
「トライアングル」は、身体障害や知的障害を持つ方だけでなく、うつ病などにより一度離職した方が再就職を目指す際にも多く活用されています。このサービスの最大の魅力は、就職前に実習制度を利用できる点にあります。実習を通して「人と話すのは苦手だが、パソコンを使った作業は得意」といった、個々の隠れた適性や能力を正確に判断することが可能です。これにより、ミスマッチを防ぎ、より長く安定して働ける職場を見つけることができるのです。もちろん、就職後も無料での相談対応が続けられており、利用者の安心感を高めているに違いありません。
💡感動的な原点:鉄道会社が就労支援に乗り出した理由
創業以来約50年間、鉄道車両の整備に専念してきた企業が、なぜ畑違いとも言える障害者の就労支援を第二の柱に据えたのでしょうか。その原点は、堀江泰社長のボランティア経験にあります。約6年前、堀江社長は、知的障害者によるサッカーワールドカップの映像を目にし、選手たちが懸命にプレーする姿に深い感動を覚えました。これがきっかけで、選手たちの活動資金を援助するボランティア活動を開始したのです。
活動を進める中で、堀江社長は、熱心にスポーツに取り組む彼らの就職先の受け皿が極端に少ないという厳しい現実を知りました。「自社だけで採用しても解決には限界がある」と感じた堀江社長は、当初、ノウハウがないにも関わらず「事業として立ち上げてみよう」と決意しました。この社会的な問題解決への熱い想いこそが、新規事業の大きな原動力となったことは間違いありません。
🤝信頼構築への道のり:雇用実績と口コミの力
就職先を紹介する立場として説得力を持つため、同社はまず、自社で障害者雇用の実績を作ることを決断しました。2015年には、ビルのメンテナンス事業を買収し、ここを障害者雇用の受け皿としました。また、実習先としての受け入れも積極的に進めた結果、障害者が快適に働ける職場環境づくりのための具体的な注意点が見えてきました。例えば、うつ病から復帰した従業員には、1時間に5分間の小休憩をこまめに挟み、心を落ち着かせる時間を与えるなど、個々の状態に合わせた細やかな配慮がなされています。
現在、「トライアングル」には、採用を希望する企業側が金融機関など約50社、就職を希望する利用者が約300人も登録しています。企業や利用者との信頼関係を築くには約3年の期間を要しましたが、その努力が実を結び、今では利用者の口コミを中心に認知度が着実に広がってきている状況です。この口コミによる広がりは、同社のきめ細かく誠実な対応が利用者から高く評価されている証拠と言えるでしょう。
🎉新たな挑戦:誰もが楽しめるユニバーサルスポーツの推進
就労支援だけでなく、同社は障害者向けのスポーツ振興にも積極的に乗り出しています。例えば、段ボールを使い、一辺が5.4メートルにもなる巨大なゲーム装置「野球盤」を製作しました。この装置は、紐を軽く引くだけでバットがボールを打てる特殊な仕組みになっており、重い障害を持つ方でも試合に参加しやすい工夫が凝らされています。2019年3月には、都内の特別支援学校で試行的な試合を開催し、大きな反響を呼びました。
この取り組みは、SNSでも「誰もが楽しめる工夫が素晴らしい」「企業の社会貢献の姿勢に感動した」といった好意的なコメントが多く見受けられました。堀江社長は、このユニバーサルな野球盤の試合を、2019年夏にも次の試合を開催したいと考えています。これは、障害を持つ方々の社会参加を多角的に応援したいという、同社の強い理念の現れでしょう。
🚀今後の展望:事業の多角化と社会貢献度の向上へ
現在の堀江車両電装の売上高は、依然として鉄道車両の整備事業が8割以上を占めていますが、今後は障害者就労支援事業の比率をさらに高めていく方針です。堀江社長は、これまでの鉄道会社との取引実績や、買収したビル清掃のノウハウを活かして、今後は駅やホテル内の清掃といった分野にも事業を拡大していきたいという展望を語っています。
私見として、歴史ある企業が培ってきたノウハウを、社会的に意義のある事業に転換していく堀江車両電装の姿勢は、他のミドル企業にとって素晴らしい手本となると感じています。本業の安定基盤を活かしつつ、社会的弱者を支えるというミッションを掲げた同社の挑戦は、きっと多くの人々の希望につながっていくでしょう。障害を持つ方々の**「働きたい」という熱意と、企業の「戦力として迎えたい」という想い**をマッチングさせる「トライアングル」の取り組みは、今後の共生社会の実現に向けた重要な一歩となるに違いありません。
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