日本企業の経営スタイルが、今まさに大きな転換点を迎えています。2019年1月1日から9月30日までの期間におけるM&A(合併・買収)の案件数は3038件に達し、前年同期比で1割も増加しました。レコフの集計によれば、この1~9月期の比較では8年連続で伸び続けており、一部の巨大企業だけでなく、幅広い業種の企業が自らの形を変えようと動いている様子が伺えます。
SNS上では「攻めの姿勢を感じる」「業界の勢力図が塗り替えられる予感がする」といった前向きな反響が目立つ一方で、買収に伴うリストラや社風の変化を懸念する声も上がっています。かつてのような救済目的の買収ではなく、成長のために不要な事業を切り離し、得意分野へ資源を集中させる「選択と集中」が加速している点は、現代のビジネスシーンにおける象徴的な動きと言えるでしょう。
巨額買収の反動と「のれん」のリスクとは?
買収総額に目を向けると、10兆8000億円と前年から約5割減少していますが、これは前年に武田薬品工業によるシャイアー買収などの超巨大案件が重なった反動に過ぎません。むしろ案件数が増えている事実は、M&Aが経営戦略の「特別な手段」から「日常的なツール」へと進化したことを物語っています。ここで注意したいのが、買収価格と企業の純資産の差額を示す「のれん」という専門用語です。
「のれん」はブランド力や技術力への期待値とも言えますが、高値で買いすぎると、将来的に業績が悪化した際に「減損」という形で多額の損失を計上するリスクを孕んでいます。現在の市場では買収価格が高騰する傾向にあり、私は企業が勢いに任せて高掴みをしていないか、冷静な目で見守る必要があると考えています。成長を急ぐあまり、足元をすくわれるような無理な投資は禁物です。
世界情勢の不透明感が影を落とす7~9月期
2019年7月1日から9月30日までの直近3ヶ月間に限定すると、案件数は951件と横ばいになり、10四半期ぶりに増加が止まりました。これには、激化する米中貿易摩擦や、出口の見えない英国のEU離脱といった地政学リスクが強く影響しています。世界経済の先行きを不安視し、海外企業への投資を一時的に見合わせる「様子見」の空気が広がっているのは、賢明な判断とも言えるかもしれません。
しかし、国内市場の成熟や人口減少という根本的な課題がある以上、日本企業が生き残るためにM&Aの手を止めることは難しいでしょう。2019年通期では、過去最高だった2018年の実績を塗り替える可能性が極めて高いと予測されます。変化を恐れず、戦略的に再編を進める企業が、次世代のリーダーとして台頭していくことは間違いありません。編集部としても、このダイナミックな動きを注視し続けます。
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