フランス北部の街ランスに、2012年12月04日に誕生した「ルーヴル・ランス」は、まさに現代建築の至宝と呼ぶにふさわしい輝きを放っています。このプロジェクトを手掛けたのは、世界的に注目を集める日本人建築家ユニットの「SANAA(サナア)」です。彼らは、2004年に開館し驚異的な集客を記録した金沢21世紀美術館での成功を足掛かりに、世界の名だたる競合を退けてこの大役を射止めました。
特に注目すべきは、奇抜なデザインで知られるザハ・ハディド氏をコンペで破ったという事実でしょう。21世紀に入り、ニューヨーク近代美術館を手掛けた谷口吉生氏や、ポンピドーセンター・メスを担当した坂茂氏など、日本人建築家の国際的な躍進には目を見張るものがあります。彼らの繊細な感性と技術力は、今や世界の文化拠点を再構築する原動力となっており、同じ日本人として誇らしく感じずにはいられません。
環境に溶け込む魔法のアルミパネルと緻密な設計
この美術館を構成するのは、サイズや比率が異なる5つの箱型の建物です。これらが角の部分でゆるやかに連結されている様子は、まるで大地に置かれたクリスタルのような透明感を持っています。一見すると単純な直方体の集まりに見えますが、実は敷地の地形やかつての鉄道引き込み線のカーブに合わせて、壁面が絶妙な曲線を描くように設計されているのです。周囲の環境を否定せず、むしろ優しく受け入れる姿勢が貫かれています。
建物の外壁と内壁には、鏡のように磨き上げられたアルミ仕上げが施されました。この素材は周囲の風景をわずかに歪ませながら映し出し、見る角度や歩く速度によって刻々とその表情を変えていきます。建築そのものが主張しすぎるのではなく、鏡面効果によって環境と同化する美学は、静寂の中にも力強い生命力を感じさせます。SNS上でも「建物が消えて空や緑と一体化しているようだ」といった感銘の声が多く寄せられています。
内部空間で最もユニークなのは、全長120メートルにも及ぶ常設展示室「時のギャラリー」ではないでしょうか。ここでは床に微妙な傾斜が設けられており、訪問者はゆるやかな時の流れを体感するように進んでいきます。展示手法も独特で、古代から19世紀までの5000年以上にわたる美術史が、特定の部屋に区切られることなく「群島状」に配置されています。これにより、絵画や彫刻を時系列で一望できるという、画期的な体験が可能となりました。
私自身の視点から述べさせていただければ、この建築は「重力からの解放」を見事に体現していると感じます。重厚な石造りの本館とは対照的に、軽やかで透明な別館を提示したことは、権威主義的な芸術の在り方をより開かれたものへと変革する意思表示に他なりません。建築が風景の一部となり、美術品が空間に浮かぶようなこの場所は、21世紀における文化施設の理想像を示していると言えるでしょう。
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