世界最小の国家でありながら、地球上に存在するあらゆる国々を凌駕するほどの影響力を誇るカトリック教会の総本山、バチカン。そこは単なる宗教の聖地ではなく、世界中に張り巡らされた教会のネットワークを通じて、驚異的な情報収集能力を持つインテリジェンスの拠点でもあります。2019年11月9日現在、そんな巨大組織の深部に鋭く切り込んだ秦野るり子氏の著書『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』が、各方面で大きな注目を集めているのをご存知でしょうか。
本書がこれほどまでに話題を呼んでいる背景には、2019年11月後半に予定されているフランシスコ法王の来日という歴史的なトピックが挙げられます。SNS上では「法王が日本で何を語るのか知るために、まずこの本を読んでおきたい」「バチカンの裏側がここまで書かれているとは驚きだ」といった声が次々と上がっており、読者の知的好奇心を強く刺激しています。宗教界のリーダーとしての神々しい姿だけでなく、一人の人間として苦悩する法王の素顔が活写されている点も、本作の大きな魅力と言えるでしょう。
バチカン銀行の闇から対中関係まで!改革を阻む巨大な壁
フランシスコ法王が断行しようとしている「改革」の中身は、私たちが想像する以上に険しく、そしてドラマチックなものです。なかでも注目すべきは、長年「バチカンの闇」と囁かれてきたバチカン銀行、正式名称「宗教事業協会(IOR)」の不透明な財務体質へのメスでしょう。専門用語として補足しますと、この組織はバチカン独自の金融機関であり、過去にはマネーロンダリングなどの温床になっているという厳しい指摘を受けてきました。法王はこうした腐敗を根絶し、クリーンな教会へと再生させるために孤独な闘いを続けています。
さらに本書では、国際政治において極めてデリケートな課題である中国との関係改善についても、詳細な分析がなされています。バチカンという組織が持つ特殊な立ち位置を浮き彫りにしつつ、理想と現実の狭間で揺れ動く法王の「悩み」が、秦野氏の緻密な取材によって解き明かされていくプロセスは圧巻の一言です。一人の編集者として私が強く感じるのは、彼が直面している困難は決して宗教界だけの問題ではなく、現代のあらゆる組織が抱える「古い体質との決別」という普遍的なテーマに繋がっているということです。
私たちは、つい法王を「完璧な聖人」として見てしまいがちですが、本書を読めば彼がいかに重い十字架を背負い、組織の内部崩壊を食い止めようと必死に足掻いているかが伝わってきます。2019年11月の来日という貴重な機会を前に、法王という人物のバックボーンを知ることは、彼が日本で発する平和へのメッセージをより深く受け止めるための最高の準備になるでしょう。歴史の目撃者となる前に、ぜひ手に取っていただきたい珠玉のノンフィクションです。
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