【深層】インド経済が6年半ぶりの低水準に!「タマネギ不作」と農村の冷え込みがRCEP離脱を招いた理由

2019年11月30日、アジアの成長エンジンと目されてきたインド経済に、かつてない急ブレーキがかかっています。インド統計局が2019年11月29日に発表した同年7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比で4.5%増という結果になりました。これは実に6年半ぶりの低水準であり、世界を驚かせた高成長の面影は今、急速に薄れつつあります。

SNS上では「好調だと思っていたインドに何が起きているのか」「タマネギの価格高騰が政権を揺らすのは本当だった」といった驚きや懸念の声が広がっています。今回の失速の震源地は、意外にも巨大な都市部ではなく、人口の過半数を抱える「農村地帯」にありました。異常気象によって農家の懐が冷え込み、それがインド経済全体の歯車を狂わせる深刻な事態へと発展しているのです。

スポンサーリンク

食卓の必需品「タマネギ」が10倍に暴騰!異常気象が奪った農村の購買力

インドにおいて農業は、全人口の55%が従事する国家の基盤です。しかし、2019年の長雨をはじめとする異常気象が、主力産品であるタマネギなどの収穫に壊滅的な打撃を与えました。生産量が例年の3割も減少したことで、5カ月前には1キログラムあたり約15円だった価格が、最近ではなんと10倍前後にまで跳ね上がっています。農家には売るものがなく現金が手元に残らない一方、消費者は高すぎて買えないという最悪の循環に陥りました。

ここで解説が必要なのが、インドの「産業構造」の特殊性です。通常、経済が発展すると労働力は農業から製造業へ移るものですが、インドでは依然として農業が製造業に匹敵する大きな比率を占めています。そのため、農村での消費が落ち込むと、その影響はダイレクトに製造業へと波及します。実際、農村で人気の高い二輪車を生産するホンダの工場では、需要の低迷を受けて2019年11月に合計14日間も操業を停止する事態となりました。

RCEP交渉からの離脱示唆。モディ政権が恐れる「零細農家」の反乱

モディ首相にとって、この経済減速は単なる数字の問題ではなく、政権維持を揺るがす死活問題となっています。インドの農家の85%は、2ヘクタール未満の土地しか持たない「零細農家(れいさいのうか)」です。彼らはもともと収入が低く、自由貿易によって安価な外国産の農産物が流入すれば、ひとたまりもありません。2019年10月の地方選挙で与党が苦戦した背景にも、こうした農民たちの強い不満がありました。

2019年11月4日、インドが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉から突然の離脱を示唆したのも、この農村票の離反を食い止めるための苦肉の策であったと言えるでしょう。RCEPとは、日中韓や東南アジア諸国などが参加する巨大な自由貿易圏を作る構想ですが、インドにとっては「開かれた市場」よりも「自国の農家保護」を優先せざるを得ないほど、国内情勢が切迫しているのです。

一編集者の視点:インドの「構造改革」は自然の猛威に勝てるのか

一メディア編集者としての私の主張は、インド経済の真の課題はGDPの数字そのものではなく、異常気象という「抗えない力」に対してあまりに脆弱な社会基盤にあるということです。モディ首相が掲げる農業の技術向上や所得倍増計画は、自然の猛威の前に足踏みを続けています。政府は2019年8月末から相次いで景気刺激策を打ち出していますが、足元の消費停滞を食い止めるには至っていないのが現実です。

2019年11月30日の現在、インド経済の低迷は一時的なものではなく、長期化する恐れさえ指摘されています。世界第2位の人口を誇る大国が、内向きな保護主義へと傾斜していくのか、あるいは痛みを伴う構造改革を断行して再び成長路線へ戻るのか。タマネギの価格一つが外交判断を左右する今のインドの姿は、新興国が抱える成長の歪みを象徴しているように思えてなりません。私たちは今、インドの真の地力が試される歴史的な場面に立ち会っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました