👃「鼻から脳へ」薬を届ける革命技術!ALS、パーキンソン病の難病治療を拓く日大の研究最前線

筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病といった脳の病気は、効果的な治療薬の開発が長らく遅れてきました。その最大の原因は、薬が病変のある患部、すなわち脳へ届きにくいという、治療における高い壁が存在するためです。しかし、この難題を打ち破る可能性を秘めた画期的な技術が、日本大学の研究チームによって開発されています。金沢貴憲専任講師らのグループは、極めて小さなカプセルを利用し、薬物を直接脳へ運ぶ新しい道を切り開こうと取り組んでいるのです。この技術は、鼻の奥にある特定の神経を経由するため、分子が大きい核酸(かくさん)医薬なども脳へと送り届けることが可能になると期待されています。

金沢専任講師らは、2030年ごろの医薬品としての実用化を目指しています。もし実現すれば、現在、治療が非常に難しいとされているALSやパーキンソン病など、神経難病の治療成績を大きく改善させるブレイクスルーとなるでしょう。この研究の鍵となるのは、脳の血管に備わる「血液脳関門(けつえきのうかんもん)」を回避する点にあります。この血液脳関門とは、脳の血管の内側にある細胞同士が隙間なく結合しており、細菌や有害物質が侵入するのを厳しく防いでいるバリアー(障壁)のことです。鈴木豊史教授が指摘するように、分子が大きな核酸や抗体、タンパク質などの医薬品は、この強固なバリアーをなかなか突破できないため、脳の病気に対する薬物送達は非常に困難でした。

スポンサーリンク

🧠脳への薬物送達を阻む「血液脳関門」を回避せよ

この壁を避けるために、研究チームが着目したのは、鼻の奥に位置する「嗅神経(きゅうしんけい)」や「三叉神経(さんさしんけい)」です。これらの神経は脳に近接しているという利点を生かし、鼻を薬を運ぶ「通り道」として活用する技術を開発しました。具体的には、タンパク質の断片であるペプチドなどを材料に、直径わずか80ナノメートル(ナノは10億分の1)という微細なカプセルを作成しています。このカプセルに、特定の遺伝子の働きを調整することで病気の原因となるタンパク質が作られるのを防ぐ核酸を搭載し、鼻から投与するのです。核酸を搭載したカプセルは、神経の周囲の隙間を満たしている液体の中などを通過して脳へと到達します。血管を経由しないため、血液脳関門の影響を実質的に避けることができると、金沢専任講師は説明されています。

動物実験でもその効果は裏付けられており、脳腫瘍を発症したラットに対して、微小カプセルに核酸を封入した液体を鼻から噴霧したところ、核酸のみを噴霧した場合と比較して、生存期間が約5割も延びるという結果が得られました。このとき、カプセルに搭載された核酸の約3パーセントが嗅神経とつながる脳の領域へ、そして約0.5パーセントが脳の主要な部分へ到達しており、これが効果を発揮した要因だと考えられています。この革新的なアプローチは、今まで治療が難しかった病気の克服に大きな希望をもたらすでしょう。

💡核酸医薬から低分子化合物まで、広がる適応範囲

今後の計画として、日本大学の研究チームは、3年以内に、鼻の奥や神経の構造がヒトと類似しているサルを用いて、核酸入りのカプセルが脳のどこに、どれだけの量を運べるのかを詳細に検証する予定です。さらに、その約2年後にはALSなどを対象とした医師主導の臨床試験(治験)を実施し、10年後の2029年ごろには医薬品としての実用化を目指しているとのことです。また、動物実験と並行して、脳へ薬が届く効率をさらに高めるための研究も進められています。その成功の鍵は2点あり、一つは噴霧したカプセルの広がり方を詳しく把握することです。鈴木直人助教は、人間の鼻の奥の形状を再現したシリコーン樹脂製の模型を用いて、カプセルが届く範囲の面積などを研究しています。

もう一つの鍵は、医薬品を噴霧するための器具の改良です。ALSやパーキンソン病の患者さんなど、指の力が弱くなりがちな高齢者でも容易に使用できるような、使いやすい器具が求められています。研究チームは企業との協力を進め、薬を効率よく届けるための器具開発を目指しています。

脳へ薬を届ける技術の開発は、他大学や企業でも急速に進んでいます。例えば、東京大学は、脳が栄養素である糖を取り込むメカニズムを利用して血液脳関門を突破する技術を開発し、マウスへの投与実験で約6パーセントが脳に到達しました。アルツハイマー病などへの治験を視野に入れているとのことです。また、中堅製薬会社のJCRファーマも、難病であるハンター症候群向けの治療薬開発を進めています。

日大の微小カプセル技術は、核酸医薬だけでなく、これまで創薬の主流であった低分子化合物にも応用できる点が極めて重要です。金沢専任講師が指摘するように、低分子化合物であっても、水に溶けやすい性質を持つものは血液脳関門を突破しにくいケースがあります。この鼻の神経を経由した微小カプセルによる運搬法を利用すれば、企業が開発を断念した水溶性の低分子化合物などが、改めて医薬品として日の目を見る可能性も出てくるのです。これは創薬の新たな地平を切り開く、きわめてポジティブな試みだと考えられます。

一方で、ALSやパーキンソン病といった神経難病は、脳への薬物送達の難易度が高いことに加え、がんや生活習慣病、感染症に比べて患者数が少ないため、市場規模が小さくなりがちです。このため、製薬企業が開発に乗り出す障壁が高いという現実があります。日本大学で生まれたような優れた「シーズ」(研究の種)を実用化につなげていくためには、企業だけでなく、政府による協力や支援が不可欠になるでしょう。SNSなどでも、この手の難病治療研究の進展を期待する声や、企業・政府のサポートを求める反響が強く見受けられ、「本当に切実に待っている人が多いのだ」と改めて感じています。医療の未来を左右する、この重要な挑戦を、国を挙げて応援していくべきです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました