【書評】SFの怪獣はなぜ「あの姿」なのか?倉谷滋『地球外生物学』が解き明かす、想像力と科学の密な関係

古くは「竹取物語」に登場する美しきかぐや姫のように、私たちが描く異星人の姿はかつて、人間そのものの形を投影したものでした。しかし、科学の進歩とともにそのビジュアルは劇的な変化を遂げています。19世紀から20世紀にかけては、火星人の代名詞として「タコ型」のイメージが定着したことは、皆さんもよくご存じでしょう。

こうしたSF作品に登場するエイリアンの造形は、単なる空想の産物ではありません。実は、その時代ごとの人類が持っていた宇宙や生物進化に関する「科学的常識」の裏返しだといえます。最新の知見が更新されるたびに、未知の生命体に対する私たちの解釈もまた、新たな形へとアップデートされ続けてきたのです。

本書『地球外生物学』(工作舎)の著者である倉谷滋氏は、第一線で活躍する進化生物学者です。専門家ならではの鋭い視点で、映画「エイリアン」の不気味な生態の中にシダ植物との驚くべき類似性を見出しています。このように、フィクションの世界を生物学の物差しで測り直す試みは、知的な興奮を呼び起こさずにはいられません。

作中では「遊星よりの物体X」や、日本でおなじみの「ウルトラ宇宙怪獣」といった多様な存在が考察の対象となっています。これらは作家たちが自らの「必死の想像力」を振り絞り、まだ見ぬ他者を描こうとした結晶です。科学者が彼らの熱意に寄り添い、真面目にその構造を分析する姿には、深い敬意と遊び心が同居しています。

2019年11月30日に紹介された本作に対し、SNS上では「怪獣図鑑を生物学的に読み解くようでワクワクする」といった声や、「空想から科学の限界が見えるのが面白い」という反響が広がっています。理屈抜きに楽しんできた怪獣たちの姿が、一転して学術的な深みを持って迫ってくる感覚は、まさに知的な冒険といえるでしょう。

個人的には、科学が「未知」を完全に否定するのではなく、むしろ想像力を補完するためのスパイスとして機能している点に強く惹かれます。論理の枠組みを使いながら、あえてフィクションの海に飛び込む著者の姿勢は、硬直した現代の思考を解きほぐしてくれるはずです。真理と空想が交差するこの一冊を、ぜひ手に取ってみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました