アパレル界の巨人「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが、物流の常識を根底から覆そうとしています。同社は2019年11月13日、ロボット制御の雄である「MUJIN」や、フランスの革新的スタートアップ「エグゾテックソリューションズ」との新たな提携を発表しました。これは、単なる機械の導入にとどまらない、世界を舞台にした「物流総力戦」の幕開けといえるでしょう。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、これからのサプライチェーンについて「人工知能(AI)とロボットが共存する姿」を目指すと力強く語りました。既に提携済みの世界最大手ダイフクに加え、今回新たに日欧の精鋭企業が加わったことで、同社を中心とした強力な「企業連合」が形成されています。SNS上では「ユニクロの進化が止まらない」「もはやIT企業」といった驚きの声が相次いでいます。
今回の提携で注目すべきは「マテリアルハンドリング(マテハン)」の自動化です。これは、倉庫内での荷物の保管や運搬、仕分けといった一連の作業を指す専門用語です。これまでは人間が歩き回って商品を探していましたが、最新技術によって「商品が自ら人間の元へやってくる」環境へと劇的な変化を遂げています。既に有明倉庫などでは、作業員を9割も削減することに成功しているのです。
特筆すべきは、MUJINが誇る「ティーチレス」技術でしょう。従来の産業用ロボットは、動きを一つずつ人間に教え込む必要がありましたが、この技術を使えば、センサーで捉えた物をロボット自身がどう扱うか判断できます。これにより、形や大きさが異なる衣類を「ピッキング(棚から取り出す作業)」するという、極めて難易度の高い自動化のハードルを軽々と乗り越えようとしています。
一方、フランスから参戦するエグゾテックの「スカイポッド」も圧巻です。これは自走式ロボットが高さ10メートルものラックを縦横無尽に駆け巡るシステムで、秒速4メートルという驚異的な速さで商品を運び出します。需要に合わせてロボットの数を調整できる柔軟性が売りで、この機動力こそが、変化の激しいファッション業界において強力な武器になることは間違いありません。
この動きの背景には、2012年に米アマゾン・ドット・コムがロボット企業を買収し、物流の主導権を握ったことへの危機感があります。私は、この「物流の自動化」こそが企業の生死を分ける分岐点になると確信しています。商品を安く早く届ける力は、もはやサービスの一部ではなく、ブランドそのものの価値に直結するからです。日欧連合がアマゾンの背中を捉える日は、そう遠くないでしょう。
物流改革の波は他社にも広がっています。オフィス通販のアスクルや家具大手のニトリホールディングスも、2016年頃から「オートストア」などの先端設備を導入し、省人化を加速させています。小売業界全体が「人が歩かない倉庫」を目指してしのぎを削る中、テクノロジーを制した者が次世代の覇権を握る。2019年11月19日現在、私たちはまさにその歴史的転換点を目撃しているのです。
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